日本企業で最高クラスの報酬を受け取る女性たちの素顔(左からロレーナ・デッラジョヴァンナ氏/会社HPより、瀬名波文野氏/共同通信社)
他の先進諸国に比べて男女格差が大きいと指摘されてきた日本企業において女性役員の比率が徐々に高まってきている。『取締役会のジェンダーバランス調査(2024年度版)』(日本総合研究所)によると、東証プライム上場各社の女性役員比率は前年比2.8ポイント増の16.4%だった。
それに伴い役員報酬にも影響が見て取れる。東京商工リサーチ協力のもと、2024年度決算期の有価証券報告書を調査すると、1億円以上の役員報酬を受け取った女性は37人。2021年度の同調査では16人だったため3年で2倍超に増加した。日本企業で最高クラスの報酬を受け取る女性はどんな面々なのか。役員報酬7億円で1位になったのは、日立製作所執行役専務のロレーナ・デッラジョヴァンナ氏。
「企業による多様性や公正性への取り組みが株価に好影響をもたらすのは世界的な流れで、外国出身の女性担当役員に7億円超の報酬を払うのは、日立がそれだけ力を入れている証しではないか。
イタリア出身のロレーナさんは1988年に日立ヨーロッパに入社しており社歴は長い。白物家電事業を売却し、海外での社会インフラ事業などに注力すると決めた日立にとって、ロレーナさんの役割は今後も大きいと考えられます」(経済ジャーナリストの福田俊之氏)
2位のリクルートホールディングス(HD)・瀬名波文野氏の報酬は4億8200万円だった。ジャーナリストの大西康之氏が言う。
「営業成績が抜群で、入社してすぐの頃から社内表彰を受けまくっていた。28歳で英国子会社の役員として業績を改善。34歳で本社の執行役員と出世街道を歩んでいる。本人は無類の読書家だが、内に籠もるタイプではなく人と会うのが好きだと言っていた。飲み会を率先して盛り上げるタイプで営業先からOB・OGまでサポーターが多い」
3位にはバンダイナムコエンターテインメント社長の宇田川南欧氏が3億3500万円でランクイン。短大卒業後の1994年に入社して以来、複数の部署でインターネット関連の新規事業に取り組んでエンタメ事業普及を支えてきた。2023年に同社初の女性社長となっている。
4位には大手住宅設備メーカー・LIXILの取締役、ジン ソン モンテサーノ氏が入った(3億円)。広報担当の役員として“難局”を切り抜けた経歴の持ち主だ。
「米国出身のモンテサーノ氏はグラクソ・スミスクラインやGEを経た後、2014年に当時のLIXIL社長でプロ経営者の藤森義明氏に請われて入社。その後、藤森氏の後を継いだ瀬戸欣哉氏と創業家の潮田洋一郎氏の間に内紛が起き、“お家騒動”となった時は両者のはざまに立って苦労したといいます。一度は退いた瀬戸氏がトップに返り咲き、モンテサーノ氏はともに同社を盛り立てています」(経済ジャーナリストの森岡英樹氏)
高額報酬に見合う活躍をする女性役員が増えれば、日本企業にとってプラスは大きいはずだ。関連記事《【女性役員の報酬ランキング】1位は7億円…日立、リクルート、バンナム、LIXILなど…年収1.5億円超えトップ22人の履歴書》では、年収1.5億円を超える女性役員22人について、エピソードも交えてランキング形式で紹介している。
※週刊ポスト2025年8月29日・9月5日号