基本デザインはガソリンエンジンモデルを踏襲している「N-ONE e:」。上部が直線的になっている丸型ヘッドライトを備えたフロントマスクでBEVモデルとして個性を演出
軽自動車BEV（バッテリーEV）としてはトップクラスの一充電走行距離295km（WLTCモード）を実現した「ホンダN-ONE e:」。通勤や買い物、そして家族の送り迎えといった普段使いでの利便性を追求した軽BEV。先行した「N-VAN e:」が商用車であるのに対し、こちらは乗用車タイプであり、乗り心地のよさと快適性、そしてゆとりある航続距離をも手に入れて『使える軽EV』として評判のニューカーマーだ。計算上では往復300km程度のドライブなら途中1回の充電で十分に走りきれることになるが、果たしてその使い勝手は？ シリーズ「快適クルマ生活 乗ってみた、使ってみた」、今回は自動車ライター佐藤篤司氏が“往復300kmオーバーのドライブ”で、その日常性を探ってみた。
片道150kmのドライブでも不安なく使える軽BEV
軽自動車は日本が世界に誇るべきライトビークルです。わずか660ccという小さなエンジンで大人4人と、最小限とは言え人数分の手荷物などを安全に運んでくれるのです。軽自動車のサイズ規格は全長3.4m以下、全幅1.48m以下、全高2.0m以下と小さなボディでありながらも、これ1台で幅広いライフスタイルに応える対応力を持っているのです。最近では欧米でも軽自動車に注目しているような報道もありますが、その商品力からすれば当然のことかと思います。
一方で、普通車と比べ、ボディが小さいことによって騒音や乗り心地の点で、いくつかの懸念があることも事実です。エンジンルームは狭く、遮音材も普通車ほど十分に配置できない、エンジン音やメカニカルノイズが車内に伝わりやすい。またエンジンが運転席に近い配置されるため音が響きやすい。そして660ccという小排気量エンジンはパワーを得るために加速時や高速走行時にエンジン回転数が上がりやすく、加速時などは当然ながらエンジン音も大きくなるのです。構造や設計上の理由でこうしたネガ要素は仕方ないのです。それでも最新の乗用軽自動車の騒音レベルは相当に低く抑え込まれています。急加速や急坂路などで無理をしなければ「快適レベル」を維持してくれているのです。
つまり、軽自動車に特段の不満を感じず、と思っていたのですが、そんなときに「日産サクラ／三菱eKクロスEV」のBEV感覚を味わいました。静かで力強く、そして低重心による安定感のある走行性に少々大げさですが「これほど魅力的なBEVは初めて」とさえ思ってしまったのです。BEVと軽自動車の親和性の高さには感心するばかりでした。そして日常的な使用状況で、家での充電（3kW/200V/14.5A）では8時間で100％フル充電可能で、その走行可能距離は約180km。「まぁ、ご近所使いが主体なら、なんとかなるか」と思い、実際に試してみてもギリギリ満足できたのです。
ところがその後、商用軽バンでありながら、軽クラスとしては大容量の「総電力量29.6kWh」というバッテリーを搭載し、「一充電あたり245km」という走行可能距離を実現した「ホンダN-VAN e:」が登場しました。カタログ値をそのまま適応するわけにはいきませんが数値の70％と考えても「170kmほど」走れそうです。これならば「往復200～300kmぐらいの中距離ドライブにも“途中1回の急速充電”で対応できる」ほどの、ゆとりを感じたのです。このスーパーハイトワゴンとしての実用性と走行可能距離を活かせば、レジャービークルとしても重宝しそうなスペックだと思いました。
