受診する患者にも及ぶ公立病院の経営難
収入を増やす手立てがほぼないうえに、公立病院には「高コスト体質」があるという。
「総務省の統計データでも明らかですが、特に医師の確保が困難な地方の病院では医師を招聘するのに高額な給与を払うなど『人件費』が高止まりしている。
また医療機関は多くの医療系企業から“確実な収入源”とみなされている側面があり、『材料費』や『設備費』にかかる費用の単価が高くなりがちです」(同前)
医療ガバナンス研究所の上昌広医師は、「都市部、なかでも首都圏の公立病院ほど赤字で経営が逼迫する可能性がある」と指摘する。
「診療報酬が全国均一の公定価格であることは、日本の医療の根本的な問題です。土地代や人件費などは地域によって大きく異なり、一律ではあり得ません。
コストが突出して高い首都圏の公立病院は、診療単価を上げられない限りは赤字が続き、将来的に破綻リスクを背負う可能性があります」
病院経営における収入構造の脆弱性が露呈したのが、コロナ禍とその後の変化だと室井氏は見ている。
「コロナ禍では一般診療の患者数が大幅に減少し手術件数などの収入源が断たれたものの、国から補助金が投入されたため経営が維持できていた。ところがコロナ禍が収束し補助金も終了した現在は、コロナ禍で定着した“受診控え”や人口減による患者数の減少が病院経営を圧迫しています」
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