全国で赤字に苦しむ公立病院が続出している(写真:イメージマート)
大規模なリストラやコストカット、そして統廃合──全国で赤字に苦しむ病院が続出している。なぜ経営悪化が続出しているのか、利用者にどのような問題や不利益が生じ始めているのか。窮地に追い込まれた地域医療の現実をリポートする。
赤字額が膨らんでいるのは地方より都市部
総務省の発表(2025年9月)によると、自治体が運営主体となる全国の公立病院の赤字は2024年度、過去最大の3952億円となった。赤字を抱える病院の割合も83%で過去最大だった。
2025年6月には医療改革の一貫として全国で約11万床の病床を削減する社会保障案を自民、公明、維新の3党で合意。10月に誕生した自維政権でもこの削減案の実現を目指す連立合意を結んだ。日本の医療体制の先細りは避けられそうにない。
本誌・週刊ポストは、医療機関の満足度調査などを手掛けるケアレビュー社のデータを基に、公立病院を年間赤字額が多い順に並べ、全国6エリアごとにワースト順にまとめたランキングを作成。独自の指標として、「医業収益(診療による利益)」から、自治体により投入される「他会計負担金(税金による補填)」等を差し引いたものを「純医業収支」として使用した。
各エリアの状況を見ると、過疎化が進む地方よりも首都圏や近畿圏など都市部の病院ほど赤字額が巨額に上ることがわかる。
病院経営に詳しい医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が言う。
「医療機関の経営状況を示す決算資料は複雑で読み解きにくいものですが、今回のデータは経営の実態を見るうえで非常に興味深い。公立病院の経営の厳しさを示す実態が如実に表われています」
公立病院の赤字は自治体からの「負担金」で補填されるが、赤字が常態化すればその影響は多岐に及ぶ。
「自治体の財政が苦しくなったり、他の医療機関との統廃合が進めば、公立病院そのものが地域から消滅してしまう。医療が物理的に遠い存在になることは、患者にとって深刻な事態と言えます」(同前)
