年代で分かれる、「努力」に対する認識
読者の皆さんの中には、このような差異を目の当たりにし、「最近の若者はハングリー精神がなくなった」と嘆く人もいるかもしれない。
ただし、「努力した結果何かを得る」という点に限れば、昔よりも今のほうがハードルが上がっていると理解することもできるだろう。ビジネスをするにしても、想定顧客のニーズが全く読めず、顧客本人ですら欲しいものがわからないような時代だ。
また、社会課題の解決を志すにしても、課題そのものが深く入り組んでいて、どこから手を付けてよいのかすら見えない。仮に昔の若者たちのほうが努力志向だったとすれば、それはある程度「得られる結果が見えていたから」という可能性がある。得られる結果が可視化されていなければ、人はがんばれないものだ。
そこで「若者の5年後の幸福度調査」では、外的に得られる成功ではなく、自身の能力を目的語に設定して、同じ質問をしてみた。
成功は、時代など自分ではどうすることもできない環境要因の影響が大きい。しかし、能力の伸長なら、少なくとも時代や社会情勢は関係ない。完全に自分が100%コントロールできる変数だ。
作成した問いはこうだ。
「人の能力の決定要因として『生まれもった才能や環境』と『その後の努力』、どちらが重要だと思いますか」
結果を図表5-3に示す。傾向としては、全体的にやや右方向(努力が重要)へ回答が動いたものの、やはり若年層の結果は変わらず-1、「努力よりも才能や環境」を選択した割合の多さが目立つ。
人の能力の決定要因として「生まれもった才能や環境」と「その後の努力」、どちらが重要だと思いますか
「人生はなかなか思うようにいかない。生まれたときから定められている宿命のようなものがあって、自分の努力で変えることはできない」
そんな思いを抱えた若者たちが増えているのかもしれない。努力したら報われるという気持ちを持っているからこそ、努力しようという意欲が生まれる。努力を信じていなければ、誰も努力などしない。
こうした「努力に対する信頼感」のようなものが、特に今の若者の間で揺らいでいるように思う。
*金間大介・酒井崇匡著『仕事に「生きがい」はいりません 30年の調査データが明かすZ世代のリアル 』(SBクリエイティブ株式会社)より一部抜粋して再構成
(第3回に続く)
【プロフィール】
金間大介(かなま・だいすけ)/金沢大学融合研究域融合科学系教授、東京大学未来ビジョン研究センター客員教授、一般社団法人WE AT(ウィーアット)副代表理事、一般社団法人日本知財学会理事。横浜国立大学大学院工学研究科物理情報工学専攻(博士〈工学〉)、バージニア工科大学大学院、文部科学省科学技術・学術政策研究所、北海道情報大学准教授、東京農業大学准教授などを経て、2021年より現職。博士号取得までは応用物理学を研究していたが、博士後期課程中に渡米して出会ったイノベーション・マネジメントに魅了される。それ以来、イノベーション論、マーケティング論、モチベーション論等を研究。『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』(東洋経済新報社)『静かに退職する若者たち』(PHP研究所)など、著書多数。
酒井崇匡(さかい・たかまさ)/博報堂生活総合研究所主席研究員。2005年博報堂入社。マーケティングプラナーを経て、2012年より博報堂生活総合研究所に所属。 デジタル空間上のビッグデータを活用した生活者研究の新領域「デジノグラフィ」を様々なデータホルダーとの共同研究で推進中。 行動や生声あるいは生体情報など、可視化されつつある生活者のデータを元にした発見と洞察を行っている。
