背中の痛みと言っても、原因となる病気は多岐に及ぶ
総合診療科が注目する「レッドフラッグ(危険信号)」
診断の第一歩は、年齢と全身状態の把握になります。20~40歳代の慢性的な背部痛は椎間板ヘルニアなど脊椎由来の痛みが多く、画像検査で診断を確定します。一方、高齢者は骨折、感染、がんなどによる重篤な脊椎疾患のリスクが高まります。従って、我々は特に以下のレッドフラッグに注意しています。
【1】年齢が20歳以下、または55歳以上
【2】動きに関わらず持続する痛み
【3】胸部痛を伴う
【4】がんの既往、ステロイド使用歴、HIV感染の既往などの免疫低下状態
【5】栄養状態が悪い、または体重減少を伴う
【6】広範囲に麻痺などの神経症状がある時
【7】脊柱に変形がある
【8】発熱がある
これらを系統的に確認し、筋骨格系疾患であると判断できれば整形外科へ紹介します。特に発熱を伴う強い背部痛がある場合は、感染性脊椎炎の可能性を考え、早期にMRI検査を行なうことが重要です。
背中の痛みの原因ががんであることも
内臓疾患が原因の場合、「いつ」「どのように」痛みが始まったかが重要です。突然発症する激痛は、大動脈解離、心筋梗塞、急性膵炎などの重篤な疾患を疑います。さらに胸痛や腹痛、悪心、排尿障害、下肢の脱力やしびれといった随伴症状を確認することで、診断の精度を高めていきます。
背中の痛みの正体が、乳がんや肺がんなどの骨転移であったり、腸が破裂する腸穿孔(ちょうせんこう)だったりするケースもあります。背中の激痛は、決して「単なる筋肉痛」と決めつけてはいけない症状なのです。
■後編記事につづく:「背中の痛み」は体からの重要なサイン、近年増加している帯状疱疹にも注意が必要 原因が特定できない場合は“痛みの緩和”に特化した治療の選択肢も【専門医が解説】
「診断の第一歩は、年齢と全身状態の把握」と語る高木教授
【プロフィール】
高木元(たかぎ・げん)/日本医科大学総合医療・健康科学分野大学院教授、総合診療科部長、東洋医学科部長、老年内科部長、高気圧酸素治療室室長。1993年日本医科大学卒業後、米国アレゲニー大学研究員、ペンシルバニア州立大学研究員、ニュージャージー医科歯科大学インストラクター、日本医科大学循環器内科准教授などを経て、2024年同大学総合医療・健康科学分野大学院教授に就任。医学研究における温故知新の実践を目標としている。
取材・文/岩城レイ子


