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医心伝身プラス 名医からのアドバイス

患者の多くが痛みを経験する「パーキンソン病発症」のメカニズム 「腸の炎症」をきっかけに発症につながるタンパク質が過剰に作られることが判明【脳科学者が解説】

腸で悪玉腸内細菌が増加し、便秘によってFABP2の発現が増えαシヌクレインが凝集する。αシヌクレイン凝集体は迷走神経を介して中脳に伝播し、運動障害が発症する。放置すると大脳皮質に伝播し、認知症を発症する

腸で悪玉腸内細菌が増加し、便秘によってFABP2の発現が増えαシヌクレインが凝集する。αシヌクレイン凝集体は迷走神経を介して中脳に伝播し、運動障害が発症する。放置すると大脳皮質に伝播し、認知症を発症する

腸の炎症がパーキンソン病、認知症を引き起こす

 パーキンソン病の発症には「αシヌクレイン」というタンパク質が深く関わっています。本来は神経細胞内に存在するタンパク質ですが、炎症や酸化ストレスを受けると「異常な折り畳み(性質の変質)」を起こして凝集体(レビー小体)という塊になります。この凝集体がドーパミン神経細胞内に大量に蓄積して細胞死を招き、ドーパミン分泌量が減少してパーキンソン病を引き起こします。

 長年の研究で着目したのは、「脂肪酸結合タンパク質(FABP)」です。これは細胞内で脂肪酸の輸送と貯蔵に重要な役割を果たすタンパク質ですが、哺乳類では12種確認されていて、臓器によってFABPの種類(番号)は異なります。私たちが発見したのは、便秘などによる腸の炎症が脂肪酸結合タンパク質(FABP)のひとつである「FABP2」を過剰に産生させ、それがきっかけとなって腸内でαシヌクレイン凝集体が作られるというメカニズムでした。

 本来は毒性のないαシヌクレインも、凝集すると分解されにくくなり毒性を持ちます。これが迷走神経(脳神経の1つで脳から心臓、肺、胃腸など体内の広範囲に分布する神経)を通って脳の深部(中脳)へ伝わり、ドーパミン神経を死滅させて筋肉のこわばりやすくみ足といった運動障害を引き起こすのです。さらに約20年という長い歳月をかけて脳全体に広がり、最終的に認知症を発症させます。この「腸から脳へ」というルートの解明が、根本的な治療と診断への大きな鍵となりました。

 αシヌクレイン凝集体が蓄積する疾患を「シヌクレイノパチー」と呼び、パーキンソン病やレビー小体型認知症が含まれます。亡くなった方から提供(献脳)された脳組織を調べる研究(死後脳研究)によれば、アルツハイマー病患者の50%にαシヌクレイン凝集体が集まったレビー小体が観察されます。つまり、パーキンソン病やレビー小体型認知症などを含めた神経変性疾患に、腸の炎症が深く関与しているということです。私は、「αシヌクレイン凝集体の中脳から大脳への伝播」、すなわち神経細胞間を伝播する際にもFABPが関与することを証明したのです。

「毒性を持ったαシヌクレイン凝集体が脳全体に広がり、認知症を発症させます」と語る福永氏

「毒性を持ったαシヌクレイン凝集体が脳全体に広がり、認知症を発症させます」と語る福永氏

■後編記事につづく:高齢化に伴い増加傾向の「パーキンソン病」の根本治療に挑む脳科学者の取り組み 治療薬「MF1」の可能性と、血液1滴で発症リスクを可視化する最新検査【脳科学者が解説】

【プロフィール】
福永浩司(ふくなが・こうじ)/BRIファーマ(株)代表取締役。東北大学薬学研究科名誉教授。熊本大学医学部、東北大学薬学部で40年間にわたり脳研究に従事し1982年に脳で記憶をつくる酵素「CaMKII(カムキナーゼ2)」を発見。大学在職中は認知症の最先端研究や産学連携を推進し、開発に携わった認知症治療候補薬は2026年にフェーズ1試験の開始を予定。2021年、研究成果の社会還元を目的にBRIファーマ(株)を設立。40歳からの認知症予知を可能にする血液検査の開発や、個々の特性に合わせた運動・生活習慣の提案を通じ、健康寿命の延伸を支援している。

取材・文/岩城レイ子

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