憧れのポルシェだったけど…(写真:イメージマート)
心の支えはマンションの“含み益”
続いては中古ポルシェに乗る40代男性・Bさんの悲哀です。元々、ポルシェ愛好家が集うネット上のコミュニティで、購入希望の相談をしていました。若い頃からポルシェに憧れていたBさんは、六本木や渋谷の街を、マセラッティやフェラーリ、ポルシェなどの欧州車で走りたいという欲求が高まり、ポルシェ購入を決意したのです。
要するに、「都会を歩く庶民をポルシェの中から見て優越感を抱く」という経験をしたかったのですね。しかし、さすがに中古でレストアがよくされた超高級品や新車を買うことはできず、300万円台の「一見してポルシェと分かる車種」を購入。
しかし、Xでは数千万円のポルシェを納車してもらった人が報告をしているし、コミュニティでも真の金持ちが見栄で購入するようなポルシェオーナーにマウンティングしてきたりする。そんな状況に辟易としたのか、子どもが生まれた現在は「燃費もかかるし、利便性のことも考えて、国産のミニバンを買っておけば良かったかも……」とこぼします。あぁ、悲しい虚栄心よ。
そして最後は、恐らく年収は1000万円には到達していない50代男性・Cさん。同氏はFacebookに月に数回、3万~5万円はする高級店のコース料理を投稿しています。それを見た人々は「そこ、予約取れないですよね!」「私も一生に一回は行ってみたい!」などと称賛コメントを書き込みますが、多分Cさんは無理をしている……。
というのも、彼が働く会社の給料水準から考えると、高級店での外食に月に6万~10万円もかけるのはキツイはずなんですよ。実家が資産家とか、株で大儲けしているとかなら別でしょうが、家族もいるし、コレを果たして妻は良しとしているのか?
そんなCさんにとっての心の支えは、マンションの“含み益”です。昨今東京のマンション価格は高騰しており、1990年代後半に3000万円台で購入したマンションが8000万円台に上がっているのです。思えば、マンション価格が高騰するようになってから、Cさんの豪遊は始まった。リタイア後は、この部屋を売って住宅価格の安い実家近くに帰ればいい、といった剛毅な気持ちになっているのかもしれません。
ただ、将来のことを考えたとき、はたしてこのままでよいのでしょうか、と大きなお世話かもしれませんが、不安はよぎります。定年退職からの再雇用となれば給料は下がりますし、いまは8000万円台のマンションがその価格を維持できるのかも不確定要素です。
いずれのエピソードにしても「所詮は他人のカネだからどうでもいい」という話なのではありますが、実際にこうした振る舞いを見せられる側としては、モヤッとする面もあります。お金が多少あっても清貧生活をしている様を見せた方が、人望は得られるのではないかと思うのですが……。
【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、大手広告会社に入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は稲熊均氏との共著『ウソは真実の6倍の速さで拡散する』(中日新聞社)。
