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「タワマン暮らしと中学受験」の共通点 そこに見え隠れするのは「レベルがワンランク上がった」という錯覚か

過熱する中学受験。「塾銀座」と呼ばれる密集地もあるという(写真:イメージマート)

過熱する中学受験。「塾銀座」と呼ばれる密集地もあるという(写真:イメージマート)

 ウェブ上でしばしば語られる「タワマンに住んで子どもを名門中学に通わせる」という成功像。著書『中学受験 やってはいけない塾選び』が話題のノンフィクションライター・杉浦由美子氏は、タワマンも中学受験も「庶民が頑張れば手が届くもの」とし、ゆえに注目されるのではと考察している。杉浦氏がレポートする「タワマンと中学受験の関係性」の第3回。【全6回。第1回から読む

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 いわゆる“ツイッター文学”では「タワマンに住んでサピックスに子どもを通わせる」というライフスタイルが手に入らない庶民の悲しみが語られる。ただ、そのライフスタイルをなんとか手に入れられる層もいる。それが手に入る層と、そうでない層の線引きはどこにあるのだろうか。実家からの支援といったものはないものとして考えてみよう。

正社員同士の夫婦は、子育て世帯の3割

 前回(第2回)の記事で正社員の平均年収について言及した。男性が584万円、女性は407万円だ(令和4年国税局「民間給与実態統計調査」)。合わせて約1000万円で、これだと今はともかく、10年前だったら、タワーマンションを買えただろう。また、子どもを中学受験させることもできるはずだ。

 つまり、「タワーマンションに住んで、子どもを中学受験させる」のは、平均的な正社員同士の共働き世帯なら可能だったのである。

 しかしだ。夫婦で正社員の平均の年収を得られる家庭というのは、それだけで庶民の中ではエリートでもあろう。東京都福祉保健基礎調査「東京の子供と家庭」によると、2022年度、都内の子育て世帯のうち、共働き世帯の割合は66.7%で、正規の職員や従業員は父が75.6%、母は47.8%。共働き世帯で世帯年収1000万円以上の割合は38.5%だ。

 一方で、世帯年収600万~800万円が17.8%、800万~1000万円が17.9%おり、600万円以下も25%ほどいることが分かる。つまり、過半数の共働き家庭からしたら、「タワマンに住んで、子どもに中学受験をさせる」のは手が届かないライフスタイルなわけだ。

 そして、子育てをしながら、正社員として平均年収407万円を稼ぐのはそうそう簡単なことではない。ある中学受験生の母親は派遣社員として大手メーカーに勤務をしている。年収は280万円ほどだ。夫の年収は550万円。大学卒業後、正社員として働いていたが、二人目を出産後に退職し、下の子が小学校に入ると派遣社員として働き出した。彼女はこう話す。

「今は子どもに手がかかるので無理ですが、何年かしたら、正社員に転換します。上の子が私立中学に通って、下の子が受験となると、年間200万円近く教育費で出て行くから、私が稼がないと」

 夫は正社員としてフルで働き、その合間に子どもたちの勉強も見ている。その夫に副業をして稼げというのは無理難題である。そうなると、妻が収入を増やすしかない。

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