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タワマン住民に浸透する「サピグノ信仰」 エリート塾のブランド力に吸い寄せられる人たちで湾岸地区は“塾銀座”状態に

晴海フラッグ周辺にはタワーマンションが林立する(写真:時事通信フォト)

晴海フラッグ周辺にはタワーマンションが林立する(写真:時事通信フォト)

 東京五輪の「選手村マンション」として話題になった晴海フラッグのタワー棟が販売され、抽選倍率も15倍と人気を博した。東京・湾岸地区などのタワーマンションが立ち並ぶ地域には中学受験塾が多く存在していることが多く、そこに居住する層の受験熱の高さがうかがえる。著書『中学受験 やってはいけない塾選び』が話題のノンフィクションライター・杉浦由美子氏がレポートする「タワマンと中学受験の関係性」の第1回。【全6回。第2回につづく

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 中学受験の取材で大手塾の幹部の話を聞いていた時のことだ。相手はあるコミックを読んだと話した。『タワマンに住んで後悔してる』(KADOKAWA、窓際三等兵原作・グラハム子漫画)である。

 主人公の平凡な主婦・舞は湾岸地区のタワーマンションに引っ越したことで、息子を中学受験させることになり、教育虐待に近い行動をするようになっていく。

 アマゾンのレビューの数は170を越え、話題になっている作品だ。レビューの大半が「星5つ」で、タイトルから分かるように「タワマン住民が後悔するストーリーを求める読者のニーズ」に応えている。

 このように、タワマン住民が苦悩をしたり、自己破産をしたりするストーリーは、電子漫画やウェブ記事でも多く見られ、人気を博している。それと同時に中学受験で苦労する話も実に需要が高い。そして、タワマンと中学受験はセットで語られることもしばしば見受けられる。

 本稿では、「タワマンに住み、中学受験を子どもにさせる人たちが後悔する物語」がなぜ人気を博すのかについて分析したい。まずはタワマンと中学受験の関係性について見ていこう。

サピックスが晴海に新校舎を開校

 今年、サピックスは東京・晴海に新校舎をオープンさせた。新マンション「晴海フラッグ」ができることを見越してのことだと推測される。総戸数は5632戸、そこに子育て世代が入居したら、当然、子どもの数は増えよう。

 中学受験は2023年にピークアウトし、今年の小学6年の模試も受験者数が予想を下回っているとのことだ。サピックスは拡大路線を進めておらず、校舎をやみくもに増やす方針ではない。そのサピックスが新校舎を出すのだから、マーケティング面で確固たる伸びしろがあるという判断があったはずだ。

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