*11:58JST 日本光電:医療DXと海外展開で中長期成長、収益力向上局面へ
日本光電<6849>は、脳波計や生体情報モニタ、AED(自動体外式除細動器)、人工呼吸器などを展開する国内有数の医療機器メーカーだ。日本初の国産AEDを開発・生産しているほか、脳波計や生体情報モニタ、AEDで国内トップシェアを有している。2026年3月期の商品群別売上高は、生体情報モニタが842億円、治療機器が562億円、生体計測機器が536億円、その他が409億円となっている。病院内の検査・モニタリング・治療まで幅広くカバーする総合力が強みであり、病院内の複数部門へ横断的な提案が可能だ。また、機器販売だけでなく医療機器の設置工事や保守サービス、消耗品の販売まで手掛けることで継続収益を確保するストック型ビジネスを構築しており、パルスオキシメータなどのセンサ技術も差別化要因となっている。
2026年3月期の連結業績は、売上高2,350億円(前期比4.3%増)、営業利益187億円(同9.5%減)となった。売上面では海外事業が好調に推移し、海外売上高は906億円(同13.1%増)と二桁成長を達成した。一方で営業利益は減益となったが、これは賃上げ対応による人件費増加、研究開発投資、M&Aや設備投資に伴う減価償却費の増加など先行投資負担が重なったためだ。特に販管費の増加が利益を圧迫した。
地域別では北米事業の改善が目立った。北米売上高は498億円(前期比18.9%増)となり、前期赤字だったセグメント利益も28億円の黒字へ転換した。人工呼吸器やAED、脳神経系群の販売が好調だったことに加え、生体情報モニタも第4四半期には二桁成長へ回復した。人工呼吸器では競合撤退の追い風もあり、特にマスク型人工呼吸器はトップシェアを獲得。その他の海外では、欧州や中南米、東南アジア、中近東・アフリカも堅調に推移しており、海外事業が今後の成長ドライバーとしての存在感を高めている。
一方、国内市場は病院経営の悪化に伴う設備投資抑制の影響を受け、売上高1,444億円(同0.6%減)となった。AEDの代理店での在庫調整やアボット製品の取り扱い終了に伴う販売減少も影響した。ただし、補正予算や診療報酬改定による病院収支改善効果が今後顕在化すれば、設備投資需要の回復につながる可能性がある。また、消耗品・サービス事業は引き続き堅調であり、収益基盤として機能している。
2027年3月期会社計画は、売上高2,325億円(前期比1.1%減)、営業利益235億円(同25.4%増)としている。売上は微減見通しだが、利益は大幅増益を見込む。最大の要因は低収益だったアボット製品の取り扱い終了だ。同製品は2026年12月末の契約満了をもって終了予定であり、売上面ではマイナスとなる一方、粗利率改善には大きく寄与する見込みだ。また、生産性向上や商品ミックス改善、北米事業の利益拡大も利益成長を支える要因となる。
市場環境を見ると、国内外で病院の人手不足や業務効率化のニーズを背景に医療DXが加速している。海外では先進国・新興国ともに医療機器需要は堅調であり、高齢化や医療水準向上を背景に中長期的な市場拡大が期待される。こうした中で同社は、医療機器から取得したデータを活用するDHS(デジタルヘルスソリューション)事業を成長戦略の柱に据えている。2026年3月期に国内でオンサイトアラーム分析ソフトウェア、入退院業務支援ソフトウェア、北米では現地開発のアラームソリューションを投入しており、今後はサブスクリプション型収益の拡大も期待される。短期的な収益寄与は限定的だが、既存機器との組み合わせによる顧客単価向上や囲い込み効果が見込まれる。
今期を最終年度とする中期経営計画「BEACON 2030 Phase 2」では、売上高CAGR(年平均成長率)5%、営業利益率15%、ROE12%の達成を目標に掲げている。また、2030年3月期には海外売上高比率45%を目指している。事業環境の急激な変化もあり、中期経営計画の経営目標値と今期業績予想には乖離が生じているものの、成長の中核を担う北米事業においては3ヵ年売上高CAGR15%の成長を見込んでいる。生体情報モニタ、脳神経系群、人工呼吸器に加え、DHSなどの高付加価値分野を強化することで、収益性の向上を図る方針だ。2027年3月期の連結売上高は減収の見通しである一方、事業ポートフォリオの見直しや既存事業とシナジーのある領域でのM&Aが進んでおり、今後はトップライン拡大に加え、利益率向上を重視する高収益体質への転換が期待される。
株主還元にも積極的だ。業績成長に応じた安定増配を基本方針とし、連結総還元性向35%以上を目標としている。自己株取得を継続的に実施しており、2027年3月期の年間配当予想は1円増配の33円である。財務基盤は堅固で、自己資本比率は70%超、現金も豊富に保有している。今後は北米事業の利益成長、DHSの拡大、営業利益率15%達成に向けた進捗が株価評価の重要なポイントとなりそうだ。
総じて同社は、国内トップシェアを有する生体情報モニタや脳波計、日本初の国産AEDの開発・生産といった強固な事業基盤を持ちながら、北米事業の拡大と医療DXを軸としたDHS事業の拡大に注力している。2026年3月期は人件費等の増加により利益成長が一時的に鈍化したものの、事業ポートフォリオの見直しや全社収益改革によって収益体質の強化が進んでいる段階だ。今後は北米市場でのシェア拡大、人工呼吸器やAEDの成長、DHSの収益化が進展することで、2030年に向けた長期ビジョンで掲げる営業利益率15%や海外売上比率45%といった目標の達成に近づく可能性があり、中長期的な収益成長と企業価値向上に注目したい。
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