*13:05JST エムアップ Research Memo(5):2026年3月期は会員基盤の拡大、EC・電子チケットの伸びで増収増益を継続
■決算動向
2. 2026年3月期決算の概要
エムアップホールディングス<3661>の2026年3月期の業績は、売上高が前期比23.0%増の31,715百万円、営業利益が同23.1%増の5,003百万円、経常利益が同32.1%増の5,432百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同78.4%増の2,969百万円と期初予想を上回る大幅な増収増益を実現した。
「ファンサイト事業」「EC事業」「電子チケット事業」がそれぞれ順調に拡大した。「ファンサイト事業」は、中核アーティスト群が総じて好調であった既存サイトの課金会員数の伸びや新規FC開設、海外公演を通じた海外会員数の増加などが想定を上回り業績の伸びをけん引した。「EC事業」も、「ファンサイト事業」との連携により順調に拡大した。特に音楽ライブ市場が活況を呈するなかで、事前販売などによる安定したグッズ販売やオンラインくじの拡大などが寄与した。「電子チケット事業」についても、取り扱いアーティストが着実に増加し、発券枚数が過去最高枚数を更新したほか、チケットトレードも成立数・案件数がともに伸び、取扱実績は過去最高を更新した。
利益面でも、円安に伴うAWSサーバー代の上昇やシステム管理費の増加、組織再編に係る費用が発生したものの、課金会費数が想定以上に伸びたことや収益性の高い「EC事業」「電子チケット事業」の伸びにより大幅な増益を実現し、営業利益率も15.8%(前期は15.8%)と高い水準を維持することができた。
財政状態については、現金及び預金の増加や「EC事業」の拡大等に伴う売上債権の増加、事業連携や余資運用を目的とする投資有価証券の増加等により、資産合計は前期末比28.2%増の31,617百万円に拡大した。自己資本についても、配当や自己株式取得を実施した一方、それを上回る内部留保の積み増し(利益剰余金の増加)により同21.8%増の9,389百万円に拡大した。それらの結果、自己資本比率は29.7%(前期末は31.2%)に若干低下している。
主なセグメント別の業績は以下のとおりである。
(1) コンテンツ事業
売上高は前期比24.9%増の27,272百万円、セグメント利益は同24.2%増の4,515百万円と大幅な増収増益となった。そのうち、主力の「ファンサイト事業」の売上高は同27.0%増の24,545百万円であった。中核アーティスト群が総じて好調に推移した既存サイトの課金会員数の伸び(同約20%増)や新規FC開設(同約12%増)、Fan+Kit利用アーティストの増加(同約31%増)、海外公演を通じた海外会員数の獲得(同約24%増)などにより課金会員数が想定以上に拡大した。2.5次元系アーティストやお笑い芸人案件等、Fan+Kitの活用や外部ID連携を強みに、ジャンル横断での新規案件獲得も課金会員数の底上げに寄与したようだ。活動面でも、アーティストアプリの機能拡張やWeb3.0技術を活用したメタバースサービス「FANPLANET」の導入拡大、ファンエンゲージメントアプリ「bubble for JAPAN」における参画アーティストの拡充など、ファンとのエンゲージメントを継続的に向上させる機能開発やサービス強化に取り組んだ。さらに、将来的なグローバル展開の加速を見据え、米国法人を設立した。
一方、「EC事業」の売上高は前期比8.8%増の2,707百万円であった。取り扱うアーティストのラインナップ拡充や新規オンラインストアの開設など販売チャネルの拡充に取り組んだほか、活況を呈する音楽ライブ市場を背景として、コンサート会場でのキャッシュレス決済や事前購入・会場受取サービスの定着が業績の伸びをけん引した。また、新たなファン体験として定着しつつある「Fanpla Chance」(オンラインくじ)も好調であり、営業利益ベースで同約34%増となった。
利益面でも、円安によるサーバー費の上昇や人件費増といったコスト要因があったものの、増収による収益の押し上げによりカバーし大幅な増益を実現した。セグメント利益率が16.6%と前期と同水準にとどまったのは、一過性費用の発生※1や原価構成の変化※2によるものであるが、それでも高い水準を維持したとの見方が妥当である。
※1 大型ファンコミュニティにおけるロイヤリティ負担の増加やEC事業における過年度修正(58百万円)による影響。
※2 EC事業において原価負担のある「Fanpla Chance」(オンラインくじ)」の構成比の高まりによるもの(グッズ販売等は手数料収入が中心であり原価負担が生じない)。
(2) 電子チケット事業
売上高は前期比12.2%増の4,399百万円、セグメント利益は同28.3%増の1,353百万円と増収増益となった。取り扱いアーティスト数の着実な拡大と音楽ライブ市場の活況を背景に、電子チケットの発券枚数は過去最高を記録した。また、電子チケット機能の外部提供も増加しており、収益機会の拡大と電子チケットの普及拡大にも寄与した。一方、「チケットトレード」についても、不正転売への対策ニーズはもちろん、幅広いニーズに対応する公式二次流通サービスとしての評価が高まっており、音楽領域での導入拡大に加え、注目の高い国際的なスポーツ・イベントや大型イベント等、非音楽領域への採用が一段と進展したことにより、成立枚数は同33%増となり、取扱実績は過去最高となった。活動面でも、ファンアプリにチケット機能を導入し、ファンデータの分析・活用による来場促進やリテンション向上などを可能としたほか、安全性と公平性のさらなる向上に向けて、顔認証技術を活用した新たなリセール機能や大型イベントにおける厳格な転売対策など、安心・安全なチケット流通基盤としての優位性を一段と高める施策に取り組んだ。
利益面でも、円安によるサーバー費の上昇などコスト要因があったものの、収益性の高いチケット販売の伸びや各種手数料の改定等により大幅な増益を実現し、セグメント利益率は30.8%(前期は26.9%)に改善した。
3. 2026年3月期の総括
2026年3月期を総括すると、引き続き20%を超える増収増益基調が続いており、同社の会員基盤を起点として事業展開するビジネスモデルがしっかりと機能していることが確認できた。特に、音楽ライブ・コンサートが活況を呈するなかで、その勢いを確実に取り込めているところは同社のファンサービスビジネスの実力や提供する価値(ファン体験)の誘引力の高さを示していると言えるだろう。活動面でも、ファンエンゲージメントの向上につながる様々な機能やサービスの充実に取り組んだほか、将来を見据えた組織再編や米国法人の設立など、成長加速に向けた動きが活発化してきた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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