定年後の人生において友人という「財産」は金融資産より大きな意味を持ち得る。三菱総合研究所のシニア調査と、それに追加項目を加えたマーケティングアナリスト・三浦展氏が主宰するカルチャースタディーズ研究所の調査結果を踏まえて、三浦氏はこう解説する。
「シニア調査では『幸せでない』人で友人と余暇を楽しむ人は、資産の大小にかかわらず2割弱しかいませんでした。逆に資産500万円未満でも『幸せな人』は、3割が友人と余暇を楽しんでいます。お金があって友人がいない人より、お金がなくても友人がいる人のほうが幸福度が増すのです」
これほどまでに友人は老後の幸せに貢献するが、同世代の男友達以外の話し相手の存在は幸福度を上げる。定年退職後、以前から興味のあったサックスを習い始めたAさん(69)はこう話す。
「音楽教室に2年くらい通った後、“ある程度上手になったかな”と思ったので、思い切って地域の社会人が集まる吹奏楽団に入ることにしました。練習後、反省会を兼ねてメンバーで食事をするんですが、普段の生活では接さない20代の若い人もそこにはいます。
最近の音楽の流行などを教えてくれ、聴く音楽の幅が広がったりするので会話していて楽しいですね。同世代の人と居酒屋で喋っても持病の話とか年金の話しかしませんからね(笑い)」
同世代が集まるとどうしても病気や介護など辛気臭い話が多くなるが、“新鮮な風”に触れると気持ちが前向きになることもあるはずだ。