田代尚機のチャイナ・リサーチ

止まらない人民元安、米中貿易紛争の影響も大きく

一方的な人民元安はアメリカからの批判の対象に

 アップルは7月31日、2018年4-6月期の決算発表を行ったが、説明会においてクックCEOはトランプ政権による追加関税政策の影響について「最終的には消費者への増税となり、経済成長率を引き下げ、意図しない結果という大きなリスクにつながり得る」と答えている。共和党の中にも反対する勢力がいる。グローバル企業、自由貿易推進派の議員などの反対は根強いものの、一般有権者の中にはトランプの中国たたきに対して、賛成する者も多いようで、そのことがトランプ大統領の政策をより過激にさせている。

 中国の市場は不動産、株式から原材料取引に至るまで、どれも投機性が強い。アメリカは利上げサイクルの最中であり、中国は景気下支えのために金融緩和を進めている。その上、貿易紛争が激化、長期化するならば、人民元を売って、ドルを買い、レバレッジをかけてドル金利高にかけるといった投機的行動に出ようとする者が出るのも仕方がない。また、海外から流入する資金についても、人民元安は不利となる。

 中国人民銀行は急激な人民元安を警戒しているのであって、人民元高に誘導しようとしているわけではないだろう。一方的な人民元安はそれ自体、アメリカからの大きな批判の対象となる。そうした批判をかわしながら、表向きは人民元安を阻止しようとしているが、為替市場の自由化を進めているので、阻止するのが難しいといった説明を当局は行いながら、実際は、緩やかに人民元安誘導(表面上は人民元安の容認)を行うのではなかろうか。

 人民元対ドルレートは米中貿易紛争が続く限り、人民元安方向に振れる可能性が高いだろう。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」、メルマガ「週刊中国株投資戦略レポート」も展開中。

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