保険治療で医療費の自己負担額が一定限度を超えた場合、超えた金額が支給される“高額療養費制度”によってがん患者の経済的負担は減るが、それでも想定より膨らんでしまう場合が少なくない。知らずにいると「自己負担額がかさんでしまう」ケースがあるからだ。
自身も乳がんを患った経験を持つ、FP(ファイナンシャルプランナー)の黒田尚子氏が解説する。
「入院時の病室が通常より広かったり、プライバシーが確保されている、などの規定の条件を満たした特別な病室を希望する場合に生じるのが『差額ベッド代』です。こうした病床に入ると高額療養費制度の対象外となってしまうため、病院ごとに定められた差額ベッド代の全額が自己負担になってしまいます」
注意すべきは、こうした特別な病室に「希望していなくても」入院するケースがあることだ。ステージIIの胃がんで手術した都内在住のA氏(68)が語る。
「内視鏡手術で20日間入院しました。ただ、『大部屋が空いていない』と言われ、個室を選ばざるを得なかったんです。すると、退院するときに20万円弱の差額ベッド代を請求されました。入院は必要だったので仕方ありませんが、差額ベッド代の制度を知っていたら、手術の日程をズラしてもらうこともできたかもしれない」
入る病室をきちんと確認することが大切だ。
他にも、入院時の「食事代」は高額療養費制度の対象外となる。1食あたりの自己負担額は460円だが、長期入院となるほど1日3食の積み重ねは大きくなる。
※週刊ポスト2018年12月21日号