田代尚機のチャイナ・リサーチ

中国で「婚前検診」復活を協議 婚姻の自由が制限される懸念も

強制婚前検診制度の復活を望む人たちの考え方とは?(イメージ)

 中国では、出生する子供のうち障害を持った子供の割合が増えているようだ。上海棋森投資控股股フェン有限公司の会長で、全人代(中国の国会に相当)の代表である馮琪雅氏は8日、強制婚前検診の復活の建議を全人代に提出した。

 婚前検診では、両人、3親等までの親族の病歴などの問診から始まり、生殖器を触診し、発育状況、病気の有無を詳しく調べることを含む内臓の検査、性病検査、血液・尿検査まで、非常に細かい検診が行われる。これによって、健全な子供が生まれる可能性が高いかどうかを判断するのである。

 かつては結婚に当たり、強制的に行われていたが、2003年10月1日に「婚姻登記条例」が正式に実施されると同時に強制ではなく、任意となった。検査の中に負担の大きな検査もあり、その後、婚前検診を受ける割合は急減している。

 馮氏は、「若い人たちの“自分は幸運である”という根拠のない楽観心理や無知が、先天的に障害を持った子供の出生を招き、自分たちの家庭生活のみならず、自分たちの両親の家庭にまで、生活や精神に大きな圧迫を与える。我が国人口は比較的多く、国土は広いことを考えると、それは社会全体に大きな負担を与え、人民群衆の生活における幸福感に重大な影響を与える。だから、私は、強制婚前検診制度の復活を建議する」と主張した。

 強制婚前検診制度の復活は、実はこれまでも、しばしば提議されている。特に、黒竜江省、雲南省、吉林省といった地域では、2003年以降も地域レベルで検診を続けていたり、無料にした上で強制としたりしている。

 この制度の復活を支持する人々は、2003年に法律上、強制ではなくなった後、検診率が急減したが、それとともに障害を持った子供の生まれる頻度が増えたと主張している。たとえば、寧波市では、2001年の婚前検診率は98%であったが、2004年には3.1%に下がっているが一方で、障害を持った子供の出生率が1.26%から、1.956%に上昇している。こうした数字に注目している。

 もっとも、こうした見方に対する反論もある。

 2005年に黒竜江省が強制制度を復活させた際、多くの人々が興味を持って、その結果を見守った。国務院法制弁公室、民生部が中心となって、衛生部、人口計画生育委員会、財政部などが協力して調査に当たったが、この時は、長い論争の結果、意外なことに、検診の効果は限られるといったものとなった。障害を持った子供が生まれる確率は年によって大きく変動し、その変動は多くの要因が関与していると結論付けられたのである。

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