投資

米中貿易摩擦の再燃でドル/円下落も、熱くなって底値売りは危険

 現地時間5月5日のトランプ大統領の対中貿易関税引き上げ発言に端を発し、ドル/円はリスク回避の円買いに大きく動いています。

 6日のシドニー時間で為替市場が開くと、ドル/円は111.00円前後で窓を開けて下落。10日に対中追加関税が発動し、そして、今週月曜には中国が報復関税を発表、一時109.02円近辺をつけました。

 現在のドル/円相場は、日本が介在していなくても、世界的にリスクが発生すれば円高に動くことを確認しました。

 テクニカル的に申し上げれば、今年の1月3日のフラッシュ・クラッシュ(大荒れ相場)以降4か月間続いたジリ高相場が終わり、下落相場に転じたと考えています。

ドル/円日足チャート(チャートはTradingView)

ドル/円日足チャート(チャートはTradingView)

 問題となるのは、今回の下落が「週末に窓を作り、それから続落する」という誰がみても下げだとわかる相場であること、言い換えれば、ショートになりやすい地合いに入ってきているということです。

 マーケットが下げを確信する相場になっているため、戻り売りが出やすくなっていると見ています。

 気になるのは生保など機関投資家の動きです。4月末に出揃ってきた新年度の生保の方針は、「オープン外債(為替ヘッジせずに為替リスクを取って外債運用)を増やす」というもののようです。

 どんな価格でも買うというわけではなく、「下がったら買う」というのが彼らの方針です。方針が決まった直後のトランプ発言でしたので、少なくとも先週前半は買いが引いていたと思います。

 しかし、13日のドル/円安値が109.00円手前ギリギリに迫る109.02円近辺だったことで、109.00円に機関投資家の買いがあることが察せられました。最初は様子を見てから、引きつけて押し目買いをするというのが彼らの常套手段なので、109.00円で買いを入れてきたものと思われます。

 こういった状況では熱くなって底値を売らないほうが賢明です。相場は「買い手も売り手も油断していればこそ動く」もので、皆が備えている状況でのトレードは非常に難しくなるということです。

【PROFILE】水上紀行(みずかみ・のりゆき):バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。主著に『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』(すばる舎)、『FX常勝の公式20』(スタンダーズ)他多数。メールマガジン「水上紀行のFXマーケットフォーカスト」配信中。ツイッター@mizukamistaff

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