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相続大改正の「課税強化」はこうして乗り切る 生前贈与で損しないための最新知識

相続大改正を前に生前贈与をどう進めるべきか

相続大改正を前に生前贈与をどう進めるべきか

 ここ数年、コロナ禍で年末年始の帰省を自粛する時期もあったなかで、家族がゆっくり話し合える機会は有意義に活用したい。親子の重大テーマとなる「相続」だが、2023年度与党税制改正大綱の内容が注目を集めている。

 親から子へ生前贈与して相続発生時(死亡時)の遺産を圧縮することは、相続税対策の王道とされてきた。多くの人が使う贈与税の「暦年課税」の制度では、1人に対して年110万円まで非課税。10年にわたって子1人に年110万円ずつ贈与すれば、無税で遺産を1100万円圧縮できる。

 ただし、現行制度では亡くなる前3年以内に妻や子など法定相続人への生前贈与があった場合、それらは相続税の課税対象となる。親が亡くなる直前まで毎年110万円の贈与を受けていた人であれば、330万円が課税対象だ。「3年の持ち戻し期間」と呼ばれる仕組みである。

 今回の税制改正大綱では、この持ち戻し期間が3年から「7年」に延長されると早くから報じられ、話題となった。今後、2023年の通常国会で法改正が審議されるが、親が亡くなる7年前の贈与にまで遡って相続税の対象とする課税強化である。相続・贈与に詳しい税理士・山本宏氏の解説。

「大きな流れとして国は、生前に贈与されても、死後に相続しても損得に差がない制度を目指す方針だと考えられます。つまり、政府の理想は持ち戻し期間を無期限とすること。ただし、無期限は実務的に難しいので、持ち戻し期間の延長ということになったのでしょう」

 持ち戻し期間の延長となれば、実に65年ぶりの制度変更だ。どう対応すればいいのか。

「ある程度の財産があって、余裕資金がある人はこれまでと同様の生前贈与を急ぐことが有効でしょう。制度改正後でも、贈与してから7年以上生きれば、相続財産に持ち戻されることはありません。つまり、相続税対策が必要な人は、少しでも早く始めたほうがいい。また、当然ながら改正前の贈与には経過措置が取られるでしょう。新制度スタート前の贈与には旧ルールが適用されるので、駆け込み贈与は選択肢になり得ます」(山本氏)

 与党税制改正大綱では、新ルールは2024年1月1日以降の贈与に適用されるとあるので、2022年の年末までと2023年の2回の贈与は「持ち戻し期間3年」として扱われる。

 また、年110万円までの非課税枠を使った贈与は、何人に行なってもいい。子供3人に贈与するなら、110万円ずつを5回贈与することで、ルール変更前に1650万円の財産を圧縮できる。

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