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生前贈与したのにこの仕打ち… 配偶者に先立たれた後に子供夫婦と同居する難しさ

配偶者を亡くしたことを機に子供と同居するという判断にも、慎重さが求められる(イメージ)

配偶者を亡くしたことを機に子供と同居するという判断にも、慎重さが求められる(イメージ)

 65歳以上の「ひとり暮らし」が、男女ともに急増している。1980年には約90万人だったのが、2020年には約670万人まで増えた。2040年には男女合わせて約890万人が単身世帯となることが予想されている。男女ともに65歳以上の人の20%超がひとり暮らしになるのだ。「高齢化」ばかりが注目されるが、その実態は「高齢者のおひとりさま化」とも言える。

 そうした人たちにとって大きな問題となるのが「相続」であり、「おひとりさま」になってから相続発生までの間には、様々な難しさがある。

 75歳の元地方公務員の男性は7年前に妻に先立たれた。2年前に軽い脳梗塞を患ったことをきっかけに、生まれ育った熊本の家を処分して埼玉の息子夫婦のもとで同居を始めたが、うまくいっていないと嘆く。

「こっちも気に入られたいから、毎月渡す食費や家賃分とは別に、孫の教育費など色々と金銭的な援助をしています。預金はどんどん減っていて、このままでいいのか……。

 息子夫婦は共稼ぎで、孫も塾通いが始まって日中はひとりで過ごすことが多くなった。熊本では近所は知り合いばかりだったけど、こっちでは日中の時間が潰せなくなり、一日が長く感じるようになりました」

 関西在住の72歳の元会社役員もこう話す。

「奥さんに先立たれた友人が、息子夫婦のマンション購入の頭金を生前贈与してやったんです。ゆくゆくはそのマンションで一緒に住むつもりだったようですが、体調を崩した後は山奥の施設に入れられて“姥捨て山状態”に。贈与なんてしないほうがいいという教訓になりましたよ」

 配偶者に先立たれた後の「おひとりさまから子供への贈与」について、相続・贈与に詳しい山本宏税理士はこう注意を促す。

「寂しい話ですが、“ひとり身になった親は現金が手元にないと子供から大事にされない”というのはひとつの真実でしょう。贈与すれば相続税が安くなるという義務感に駆られる高齢者は少なくありませんが、考えものです。現金を手放すと、住まいなどの選択肢を自ら狭めることになります」

「おひとりさま」になると基礎控除が減るなどして子供の相続税の負担が大きくなる可能性がある。それを避けるために相続財産を圧縮しようと、子供や孫への生前贈与に熱心になるケースが散見されるが、落とし穴もあるわけだ。

「子供のことを考えつつ、やはり“自分の人生がいちばん大事”と考えるのがいいでしょう」(山本氏)

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