「内向きな村社会」になることへ危機感をあらわにした鳥井信宏氏(時事通信フォト)
〈「わしゃ、やるで」。あえて関西弁としましたが、トップとしての私に課せられた期待への返答であり、今の偽らざる気持ちです〉
そう所信表明を綴ったのは、3月25日の株主総会でサントリーホールディングス6代社長に就任した鳥井信宏氏。同社トップの座は10年ぶりの“大政奉還”となった。
冒頭の言葉は、信宏氏が就任翌日に社員に〈サントリーグループ社長に就任して〉と題して送った社内メールの一部だ。サントリー社員が言う。
「メッセージには会長に就任した新浪(剛史)さんに対する感謝とともに、昨年は実現できなかった予算達成について、今年は売上・利益ともに達成する『執念』を持つよう呼びかけられています。信宏さんは温和でスマートな人柄ですが、メッセージでは関西弁で決意を表わすなど、少し印象と異なりました」
なかでも社員を驚かせたのが、「村社会になるな」という言葉だという。
「信宏さんは、長年の社風について評価しつつも、『強すぎるサントリー愛は弱みにもなりえる』と指摘していました。社内が『内向きな村社会』となることへの危機感を言葉にして社内に表明したのは、10年ぶりの創業家トップとなる自らを戒めるような話でもありました」(同前)
『経済界』編集局長の関慎夫氏は、現在のサントリーの事業構造を意識した発言ではないかと言う。
「新浪氏が主導した2014年の米ビーム社の買収、経営統合の成功により、今やサントリーの海外売上比率は5割を超えています。人口減などで国内市場が縮小せざるを得ないなか、今後は一層、“外向き”のビジネスが重要性を増します。海外事業でもその推進が期待されます」
新社長の手腕が問われている。
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※週刊ポスト2025年4月18・25日号