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FiscoNews

【注目トピックス 日本株】トリケミカル研究所:半導体製造のニッチ市場で独自ポジション、高い収益性とグローバル展開による成長に注目

*13:41JST トリケミカル研究所:半導体製造のニッチ市場で独自ポジション、高い収益性とグローバル展開による成長に注目
トリケミカル研究所<4369>は、世界最高レベルの純度(99.9999%以上)を誇るウルトラファインケミカルと呼ばれる高付加価値化学薬品の開発・製造を行う企業である。売上の9割以上を占める半導体製造用の化学薬品は、スマートフォンやPCなどのデバイス、データセンターや通信インフラなどに不可欠なロジック・メモリ等の半導体製造に利用されている。多品種・少量生産が求められる特殊な化学薬品市場において、長年にわたり高いシェアと技術力を維持しており、国内および海外の半導体メーカーや装置メーカーとの関係も深い。2025年1月期におけるユーザー地域別売上高の比率は、中国37.0%、台湾31.7%、日本20.6%、韓国8.2%、その他2.5%である。

同社の製造する化学薬品は、CVD(化学気相成長)、エッチング、拡散といった半導体の製造工程で用いられる。これら半導体の製造工程では数百から数千種類の化学薬品が利用されるが、その中には年間数グラムから数十キログラムしか使われないものも含まれる。同社の特徴は、少量であっても半導体の製造工程で不可欠な化学薬品の開発・製造への特化であり、年間数百種類の化学薬品について、数ミリグラムから数十トンという幅広いオーダーに対応できる柔軟な生産体制を整えている。効率性を求める大手化学メーカーが大型の製造設備を使った化学薬品の大量生産に集中する中、同社はニッチ市場である多品種・少量の高付加価値化学薬品に注力、これが差別化と約25%という高い営業利益率が維持できる要因だ。また、半導体製造に用いられる材料は、回路設計の高度化や化学物質規制の強化などにより常に改良や新規開発が求められるが、特に微細化の進展は少量かつ多品種の新規材料の開発ニーズをもたらすことが多々ある。半導体業界のメインプレーヤーと深い関係を築いてきた同社は、このような新規材料の開発のニーズをいち早く認知、材料工学・応用化学の知見を生かし新材料の開発・供給を行うとともに、自社技術の強化・蓄積に繋げている。

ニッチな領域で高純度化学薬品を開発・製造する同社の最大の財産は、科学知識と経験を備えた専門人材だ。同社は、新製品の開発・製造には時間や精神的なゆとりのある仕事環境が必要という考えから、「ゆとり創造」を経営理念として掲げている。また、同社は離職率を継続的に測定し適切な対応を行うことにより、技術やノウハウの蓄積・継承が途切れることのない持続的な組織の維持を図っている。創業の1978年から、時短勤務といった福利厚生の充実や透明な人事評価制度の導入など、同社は従業員のエンゲージメントを高める取り組みを実施しており、2023年には健康に配慮した環境づくりを進める取り組み「健康経営」も開始した。なお、同社の就業時間は午前8時30分から午後4時30分となっているが、これも働きやすい環境づくりの実績の一例である。

2025年1月期の通期業績は、売上高18,905百万円(前年比68.1%増)、営業利益5,256百万円(前年比169.8%増)となった。コロナ化の需要一巡による半導体メーカーの減産の影響を受け不調だった2024年1月期の決算から一転、メモリ不況からの回復と中国向け売上高の急成長を反映し、売上高、営業利益ともに過去最高の数字を記録した。特に、2025年1月期における中国のユーザー向け売上高は、前年の1,777百万円から7,000百万円へと前年比293.9%増の大幅増となり、業績好転の大きな要因となった。2024年8月には中国に現地法人を設立、現地での営業活動の円滑化も進めている。また、韓国のSKマテリアルズとの合弁会社SKトリケムからの持分法投資利益が反映される経常利益も、6,538百万円(前年比100.9%増)と過去最高を記録した。メモリ向けを中心とした中国向け売上高の大幅増やAI用途を中心としたロジック半導体の好調を背景に、2026年1月期の業績予想は、売上高26,000百万円(前年比37.5%増)、営業利益6,050百万円(前年比15.1%増)、経常利益6,900百万円(前年比4.8%増)とさらなる増収増益を見込んでいる。

同社は3ヶ年の中期経営計画を毎年見直すローリング方式を採用している。2025年3月策定の中期経営計画において、最終年度の2028年1月期の計画数値は、売上高31,500百万円、営業利益8,620百万円、経常利益9,430百万円である。売上高の成長は台湾と国内向けが中心であり、急成長中の中国向け売上高については2027年1月期、2028年1月期ともに減収を見込むとしている。競合出現の可能性を計画数値に反映した結果であり、慎重にリスクを織り込んだ計画と言えよう。同社は株主還元にも積極的で、2014年1月期から、ほぼ一貫して増配を継続(2024年1月期のみ横ばい)しており、今後も可能な限り増配を継続する方針としている。先端半導体製造のニッチ市場において独自のポジションを確立、約25%という高い営業利益率を維持して成長し続けている同社の今後の展開には注目しておきたい。

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