特権を特権とも思っていない無自覚さが浮き彫りに(辞表を提出した江藤拓・前農水相/時事通信フォト)
佐賀市内の講演で「コメを買ったことがない」と発言して批判の嵐を浴びた江藤拓・農水大臣を石破茂・首相は更迭し、小泉進次郎氏が後任の農水大臣となった。江藤氏、石破氏、進次郎氏はいずれも世襲政治家だが、この騒動を通じて、与党・自民党の政治家たちが議員としての特権を特権とも思っていない無自覚さが浮き彫りになったと言えるだろう。
江藤氏の問題発言、その後の更迭劇を受け、本誌・週刊ポストの5月26日発売号では、「議員特権」の実態を総力特集している。江藤氏が支援者からコメを受け取っていると発言したことについて、地元・宮崎の農家に取材すると、「政治的な支援や便宜を払ってもらう目的ではないだろう」と擁護する声もあったものの、農産物を受け取っていること自体は当たり前と認識されていた。
自民党のベテラン秘書ら永田町関係者に聞いても、「支持者からビール券をもらうことも多い」「超党派の議員団で農家の視察に行った後、メロンが段ボールで何箱も贈られてきた」「地元でガソリンスタンドを経営する支援者からタダでガソリンを入れさせてもらっている議員がいた」といった証言が得られた。
政治資金研究の専門家は「国会議員が有権者や利害関係者から物品を無償提供受けることは法的にはグレーゾーン」としながらも、倫理観や道義的な責任が問われる問題であり、「何らかの規制が必要ではないか」と問題提起した。
そもそも国会議員には、年2200万円の歳費・ボーナスや都内一等地の格安議員宿舎、新幹線のグリーン車に乗れる無料パスなど、“表の議員特権”と呼ぶべきものにも多額の予算が投じられている。それらを国会議員としての活動から外れた目的で使用していることが問題化したケースも多い。
後任の農水大臣となった進次郎氏にしても、父・純一郎氏から2009年に地盤を引き継いで際に、父の政党支部に残っていた政治資金を引き継いだ「無税相続」が報じられたこともある。自民党の世襲政治家において、同様の手法で特権的に先代の資産を引き継いでいる例は数多ある。
そうした議員特権を当たり前と受け止めてきた政治家たちに、コメ高騰などで苦しむ国民が求める“消費者目線”の施策が進められるのか、甚だ疑問だ。
マネーポストWEBの関連記事『《議員の活動費用に税金589億円》石破首相も小泉進次郎農水相も江藤前農水相も貪り尽くす“議員特権” コメどころか酒に背広にガソリンももらう“ごっつぁん”体質』では、週刊ポスト掲載記事を5月25日に全文先行公開している。国会議員が享受する特権とその予算額を一覧化したリスト、格安議員宿舎と高級マンション生活の“二重生活”が問題化した実例、そして石破首相の事務所にも贈り物とみられる農産物が山積みになっていたとする証言などを詳報している。