*09:00JST ベトナム市場の格上げに思惑【フィスコ・コラム】
ベトナム株式市場が空前の活況に沸いています。代表的な株価指数VNは年初から3割超も水準を切り上げ、最高値更新が続きました。調整売りに押されても、力強い買戻しが目立ちます。同国株式市場の格上げ観測が背景にあり、上値追いが続くか注目されます。
VN指数は夏場にかけて1350ポイント付近で伸び悩んでいましたが、3年前の最高値圏である1500ポイント付近を7月に上抜けると一気に上昇基調を強めます。8月の1カ月間だけで10%超も値上がりし、直近では取引中に1700ポイントを上抜ける場面もありました。1600ポイント台では調整の売りが強まると大きく切り返すため、ボラティリティが高くなっていることは否めません。
その要因として、やはり高成長を維持していることが挙げられます。ベトナムのチン首相は2025年の成長率目標を8%台前半に引き上げ、将来の二桁成長を見据えた改革姿勢を打ち出しました。米トランプ政権との貿易交渉の成功により、高関税を回避できた点も好感されます。さらに国家主導によるマクロ政策の安定化、主要企業の業績拡大なども足元の強気相場を強力に支えています。
そして、何と言ってもベトナム株式市場の格上げ期待の視点は欠かせません。現在フロンティア市場に分類されるベトナムは、FTSEラッセルの評価で早ければ来年にも新興国市場入りが予想されます。取引システムの刷新や外国人投資家の規制緩和といった制度改革を進め、国際基準に沿った市場インフラ整備が評価対象に。当局は株式売買の利便性向上を急ぎ、外国人が参入しやすい環境を整えつつあります。
実際に格上げされれば、指数に連動するETFなどパッシブ資金の本格流入が期待されます。主力7銘柄に10億ドル超の新規マネーが見込まれます。投資家の裾野が広がることで流動性が高まり、調整局面でも下値を支える要因となるでしょう。加えて、新興国指数に組み入れられることで、海外年金基金や長期資金が参入しやすくなり、安定的な資金供給の仕組みが形成される点も大きなメリットです。
ただ、外国人持株比率の上限が依然として多くの企業に残り、自由な資金流入を阻害する一因となっている点は今後の課題となるでしょう。一部の有力銘柄に売買が偏りやすい市場構造、取引システムの信頼性や情報開示の国際基準適合度にも改善の余地が残ります。そのため、外資規制の柔軟化や企業ガバナンスの透明性強化が焦点に。相場の乱高下よりも、制度改革の進展度合いや格上げ判断の行方が注目されます。
(吉池 威)
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