*09:00JST 年末までのドル円相場【フィスコ・コラム】
ドル・円相場の方向感を欠く値動きが目立ちます。8月初旬から2カ月近くにわたり、147円中心のボックス相場は継続。日米中銀の政策方針の違いによりドル安・円高に振れやすいものの、政治情勢に翻弄され、年末まで膠着状態が続く可能性が出てきました。
ドル・円は8月1日に発表された米雇用統計の悪化を受け、151円付近から大幅に下落。9月3日には一時149円台に再浮上も失速。146円台では値ごろ感による買戻しで一段の下げは抑制され、下値の堅さが目立ちます。半面、ドル買い材料に乏しく、上値の重さも顕著で147円台での推移が続いています。9月25日の予想外に強い経済指標を背景にドル買いに振れましたが、一段の上昇は想定しにくい状況です。
米連邦準備制度理事会(FRB)は10月と12月の連邦公開市場委員会(FOMC)でそれぞれ0.25%ずつ、計0.50%の政策金利引き下げが見込まれます。パウエルFRB議長は直近の講演でタイミングを明言しておらず、追加緩和には慎重なスタンスも感じさせます。ただ、経済指標は強弱まちまちながら、目下の主要テーマは雇用情勢で、目先も回復の遅れが鮮明になればドル売り再開が予想されます。
さらに、トランプ米大統領は自身の意向を反映させるため、新任のミラン理事をはじめFRB内にハト派寄りの当局者を送り込み、利下げ圧力を強める方向。いずれもインフレ抑制よりも成長優先を唱える経済学者や実務派で固められており、議長に利下げを促す役割を担うとみられます。ただし、このドル安要因も日銀が政治日程に縛られて利上げを見送る構図と相殺されやすく、大きな動意は生じにくい展開となりそうです。
日銀は9月の金融政策決定会合で0.50%の政策維持に2人のメンバーが反対し、0.75%への金利引き上げを主張しました。加えて保有するETFとREITの売却を決め、引き締め姿勢を示しました。ただ、円買い一服後は再び円売りに傾き、ドルをはじめ主要通貨を支える要因に。現時点で利上げは12月がメーンシナリオ。
日銀の利上げ観測を弱めているのが政治情勢です。石破首相の退陣に伴う10月4日の自民党総裁選の後は、衆院解散・総選挙のシナリオが浮上。党重鎮は総裁選の余韻が残るなかで総選挙に打って出るのが権力維持の近道と考えていることが背景にあります。衆院選で各党が弱者救済の立場から歳出拡大の政策を乱立させれば、財政悪化懸念の円売りは継続。ドル・円は当面、伸び悩みと下げ渋りのなかで推移しそうです。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。
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