*11:03JST 極東貿易 Research Memo(3):2025年3月期の営業利益は20億円を超え、好業績を継続
■極東貿易<8093>の業績動向
1. 2025年3月期及び2026年3月期第1四半期の業績概要
(1) 2025年3月期の業績概要
2025年3月期の連結業績では、売上高は3事業セグメントとも増収(特に、鉄鋼・化学プラント向け設備事業、地震・振動機器事業、自動車部品用樹脂が好調)であり、前期比21.4%増の52,982百万円となった。営業利益は同83.3%増の2,038百万円、経常利益は同69.8%増の2,525百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は負ののれん発生益2,137百万円などにより同221.5%増の3,717百万円となった。
原材料価格やエネルギー価格の高騰、円安による物価の上昇、ウクライナ紛争の長期化や中東情勢の不安定化といった地政学リスクの高まり、米国関税政策の影響など不透明な事業環境が続くなか、同社は、コロナ禍による業績ショック(2021年3月期営業利益362百万円、前期比58.7%減)を克服し、営業利益は2期連続で10億円を超過した。さらに、2025年3月期には20億円を突破した。好業績が継続している要因としては、基幹事業の受注回復、新規商材の受注拡大、M&A案件の業績寄与が挙げられる。長らく低迷していた基幹事業である産業設備関連部門が回復期に移行し、国内プラント向け、海外プラント向け機器・設備とも好調に推移した。特に、国内大手鉄鋼・化学メーカーの設備更新の増加がプラスに作用し、国内プラント向け受注は4期連続の増加を達成している。また、地震・振動機器、掘削等の資源開発機器、風力発電所建設時の環境影響調査などに用いられる鳥類調査レーダーシステムなどの新規商材の受注が拡大したことも寄与した。さらに、2024年10月から11月にかけて子会社化した三幸商会とウエルストンが、いち早く2025年3月期下期の連結業績に寄与した。
(2) 2026年3月期第1四半期の業績概要
2026年3月期第1四半期は、グループ入りした三幸商会及びウエルストンの業績が大きく寄与したことに加え、海外向けプラント機器事業や資源・計測機関連事業などが好調に推移した。これらの結果、2026年3月期第1四半期の売上高は16,041百万円(前年同期比53.0%増)、営業利益は734百万円(前年同期比243.0%増)となり、大幅な業績回復を達成した。さらに、親会社株主に帰属する四半期純利益についても、前年同期に特別損失として計上した減損損失が当期には発生しなかったことなどから、大幅な増益となった。
産業設備関連部門では、産業インフラ関連事業の海外プラント向け重電機器の受注が前期から引き続き好調を維持し、掘削関連機器や航空宇宙・防衛関連機器の受注も順調に推移した。セグメント利益については、2023年3月期に一時的な損失を計上したものの、前期には黒字転換し、2025年3月期は利益が増大した。産業素材関連部門では、2024年下期に連結対象となった汎用プラスチック・エンジニアリングプラスチック事業(三幸商会)の業績が大きく寄与した。加えて、機能素材関連事業では北米向け自動車部品用樹脂などが好調に推移し、さらに生活・環境関連事業においても、航空機向け接着剤が旺盛な需要を背景に堅調に推移した。機械部品関連部門では、精密ファスナー関連事業が引き続き堅調であったほか、2024年11月にグループ入りした船舶補修部品事業(ウエルストン)の業績も寄与した。また、特殊スプリング関連事業についても、コンストン(定荷重ばね)などの業績が改善している。
2. 2025年3月期のセグメント別業績
(1) 産業設備関連部門
2025年3月期の売上高は前期比19.6%増の14,744百万円、セグメント利益は同389.6%増の1,038百万円となり、期初予想を大幅に上回った。この好調な業績は、前年からの緩やかな回復傾向が加速し、ほぼすべての商材及び主要顧客からの受注が増加に転じたことによるものである。産業インフラ関連事業においては、国内基幹産業(鉄鋼・化学)の設備投資需要回復を受け、鉄鋼・化学プラント向け設備の受注が拡大した。また、海外プラント向け機器事業も引き続き好調を維持した。さらに、地震・振動機器の受注が好調だったほか、資源・計測機器関連事業においても、航空宇宙・防衛関連機器や海洋資源開発機器の受注が堅調だった。
(2) 産業素材関連部門
2025年3月期の売上高は前期比47.8%増の19,444百万円、セグメント利益は同27.3%減の141百万円となり、増収減益の結果となった。売上高の急増は、連結子会社となった三幸商会の影響が大きく、2025年3月期下期以降のグループイン効果が主因である。一方、セグメント利益の減少はM&A関連経費(213百万円)が影響しており、これを除けば実質的には増益であった。機能素材関連事業では、堅調な米国経済を背景に、北米向け自動車部品用樹脂が好調に推移した。しかし、生活・環境関連事業では、為替の影響を受け、食品用副資材などの輸入商材が低調であった。同社は、産業素材関連部門を今後も積極的かつ機動的な成長投資を行う事業セグメントと位置付け、収益力の強化を目指す方針である。
(3) 機械部品関連部門
2025年3月期の売上高は前期比3.4%増の18,792百万円、セグメント利益は同21.7%増の858百万円の増収増益となった。精密ファスナー関連事業においては、主に産業機械及び建設機械向けの需要が若干減速したものの、全体ではほぼ前期並みの水準を維持した。また、特殊スプリング関連事業では、人員削減などの構造改革が奏功し、黒字転換した。さらに、連結子会社となったウエルストンの業績も寄与した。今後もウエルストンを子会社化したヱトーを中心に、機械部品関連部門を積極的かつ機動的な成長投資を行う事業セグメントと位置付け、収益力向上を図る方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水 啓司)
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