*11:04JST ファンペップ Research Memo(4):皮膚潰瘍治療薬の追加第3相臨床試験が進行中
■ファンペップ<4881>の主要開発パイプラインの動向
同社の開発パイプラインは、皮膚潰瘍を適応症とする「SR-0379」のほか、抗体誘導ペプチド技術で開発した乾癬及び強直性脊椎炎を適応症とする「FPP003」、花粉症を適応症とする「FPP004X」、乾癬を適応症とする「FPP005」の4品目があり、このうち、2026年は「FPP004X」の第1相臨床試験が終了し、「SR-0379」の追加第3相臨床試験が進行中となっている。また、そのほかにも複数の開発候補品を育成中である。
花粉症ワクチンは第1相臨床試験結果を受けて今後の開発方針を検討中
1. FPP004X(花粉症)
抗体誘導ペプチド「FPP004X」は、大阪大学大学院医学系研究科との共同研究により同社が創製した開発化合物である。標的タンパク質となるIgEはアレルギー性疾患の発症・進展に関与する重要因子で、花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)が代表的な疾患として知られている。
(1) 契約状況
2024年3月に、塩野義製薬と全世界を対象とした独占的開発及び商業化権のオプション契約を締結し、契約一時金として3億円を受領した。オプション権が行使された場合には、ライセンス契約一時金及び開発・販売の進捗に応じたマイルストーンとして最大178億円(契約一時金の3億円を含む)を獲得する。さらに販売額に応じたロイヤリティ収入も得ることになる。なお、契約一時金3億円は前受金として流動負債に計上されており、オプション権の行使または解約が確定した段階で事業収益として計上する。また、契約金の一定率はメディパルホールディングス<7459>(以下、メディパル)に支払う契約※となっている。
※ 2016年2月に、同社はメディパルと抗体誘導ペプチドプロジェクトの研究開発支援を目的とした提携基本契約を締結し、研究開発協力金を受領した。メディパルは本研究から創出された抗体誘導ペプチドのうち一定数の対象開発品を選定したうえで、同開発品から得られる契約一時金及び開発マイルストーン収入の一定率を同社から受け取る契約となっている。「FPP004X」も選定品目に含まれている。
(2) 開発の進捗状況
同社は花粉症を適応症とした「FPP004X」の国内第1相臨床試験を2025年3月に開始した。同試験は健康成人を対象とするパート1と花粉症患者を対象とするパート2で構成され、「FPP004X」またはプラセボを反復投与(筋肉内投与)した場合の安全性、忍容性、免疫原性(抗体産生)を評価する。パート1では健康成人を対象に、コホート1(低用量、4週間間隔で2回投与)、コホート2(高用量、4週間間隔で2回投与)、コホート3(高用量、4週間間隔で3回投与)を実施した。続いて2025年8月からはスギ花粉症患者を対象に、パート2のコホート4(高用量、4週間間隔で3回投与)を開始した。パート2ではスギ花粉曝露室を用いた試験を実施し、人工的に一定濃度の花粉を飛散させた環境下でスギ花粉に対する反応を確認した。
2026年5月に最終被験者の観察期間が完了し(全93症例)、同年7月に臨床試験の速報結果が発表された。主要評価項目である安全性や忍容性について問題がなかったこと、免疫原性(抗体産生)についても抗IgE抗体価(標的タンパク質ヒトIgEエピトープに対する抗体)の上昇が確認され(パート1:35/36例、陽性率※:約97%、パート2:24/24例、陽性率:100%)、抗体価の推移も最終投与(2回目または3回目)の4週後で最大となり、その後緩やかに減少し、最終観察日まで検出されるなど良好な結果が得られた。しかし、探索的評価項目として最も注目していたスギ花粉曝露による合計6眼鼻症状(鼻汁、くしゃみ、鼻閉、鼻内そう痒感、眼のかゆみ、流涙)スコアについては、プラセボ群24例に対してコホート4の「FPP004X」群24例は改善が認められなかったとしている。簡潔に言えば、抗体は体内で産生されたものの、症状の改善は確認できなかったということになる。
※ 感染症ワクチン(インフルエンザ、SARS-CoV2)の陽転判定基準を参考に、ベースラインと比較して4倍以上に抗体価が上昇した症例を「陽性」と判定。
抗体が産生できたにもかかわらず、症状の改善が認められなかった原因については現在、詳細な解析を進めている段階でその結果を待つ必要がある。今後の「FPP004X」の開発方針についても塩野義製薬と協議して進めることになる。
(3) 市場規模
国内での花粉症の患者数は年々増加傾向にあり、有病率は1998年の19.6%から2019年には42.5%まで上昇し、約5千万人規模の患者数となっている。有病率の高さや症状の激しさ、低年齢化が進んでいることから、政府は国の社会問題と位置付け、全国でスギの伐採計画や花粉の飛散防止対策などをまとめている※1。花粉症を含むアレルギー性鼻炎の医療用医薬品(内服薬)の国内市場規模は約1,700億円(2019年度)、市販薬で約400億円(2022年)と推計されており、現状はさらに市場規模が拡大していると考えられる。治療薬としては、抗ヒスタミン薬を中心に多くの内服薬や点鼻薬、点眼薬が販売されているが、重症例では抗IgE抗体医薬品の「ゾレア(R)」(以下、「ゾレア」)※2が処方されている。
※1 内閣府「花粉症対策の全体像」(2023年5月30日)資料。
※2 主にアレルギー性喘息治療薬として販売されていたノバルティスファーマ(株)の抗IgE抗体製剤「ゾレア」が、抗体医薬品として初めて花粉症への適応追加承認を2019年12月に取得した。「ゾレア」の全世界での販売額は2025年で約54億米ドル。
「FPP004X」ではワクチン効果の持続期間が長いという特長を生かして、花粉症のシーズン(飛散時期)前に1回投与すれば、シーズンを通して症状を緩和できる新しい治療選択肢の提供を目指している。中等症から重症患者を対象として開発に成功した場合、国内での売上ポテンシャルは数百億円規模になると弊社では見ている。今回の臨床試験結果によって、開発の進捗は一歩後退したことになるが、潜在ニーズの大きい領域だけに原因の解明により開発が進展することを期待したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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