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学校でも職場でも「それパワハラです」の指弾に身構える指導者たち 叱咤激励、奮起を促す言葉もアウトなのか

今や上司が部下の顔色をうかがう時代に(イメージ)

今や上司が部下の顔色をうかがう時代に(イメージ)

 パワハラが許されないのは当然だが、「どこまでがパワハラか」「何を言ったらパワハラに当たるのか」という線引きは非常に難しい。「両者の間に信頼関係があれば……」という言い分をしばしば目にするが、そのセリフ自体がパワハラの隠れ蓑にもなりかねない。人を指導する立場にある者は、時に注意や叱責をしなくてはいけない場面に遭遇するが、その際に「パワハラだ」と指摘を受けたらどうするか──。色々な人が様々な場面で意図せず“地雷”を踏んでいて、そこには同情の声も少なくないようだ。

サッカーの試合、檄を飛ばしたら「パワハラだ」

 しばしば指導者のパワハラが指摘されがちな学校のクラブ活動については、こんなエピソードもあった。東日本のA高校のサッカー部は、正月に行われる全国選手権の県予選に出場した。A高校は近年、全国大会出場から遠ざかっているが、かつては全国大会で上位まで勝ち進んだこともある。しかし初戦の前半であっさりリードを許し、監督はしびれを切らした。試合を観戦した保護者のMさん(40代/男性)が振り返る。

「初戦の相手はこれといった実績がなく実力でも劣っているとみられた高校でしたが、前半でリードを許して、選手が激しく動揺していることはスタンドからでも分かりました。そこでハーフタイムに監督が、『気持ちで負けてるんだよ!』『お前ら、ここで終わっていいのか?』と檄を飛ばしたんですが、結局そのまま負けてしまった。ウチの息子も号泣していましたが、問題はその後です。

 試合を見ていたある保護者が、ハーフタイムの監督の発言を取り上げ、『パワハラだ』と学校に訴えたんです。ハーフタイムのミーティングでは、中心選手の1人がやり玉に上がり、『何やってんだ!』『100年早い!』などとカツを入れられていましたが、当該選手とは無関係の保護者が発言を問題視し、その後、監督はしばらくグラウンドに出てこられなかったそうです」(Mさん)

 もちろんたとえ暴力を伴わなくても、言葉が暴力に代わるパワハラの手段になることは十分にある。ただ、Jリーグや日本代表の試合でも、監督が声を荒らげて選手を叱咤する場面は珍しくない。Mさんはこう続ける。

「私自身も同校のサッカー部OBですが、当時のサッカー部の監督は“熱い人”として有名で、時には手が出ることもありました。ただ、それは昔の話ですし、さすがにそこまでのことはありません。ただ今回は、傍目に見ても息子たちの試合ぶりには覇気が欠けていた。高校3年間、朝から晩までボールを追い掛けてきた結果があれでは、監督は歯がゆかったはずです。

 問題視した保護者の申し出に同調する人はいませんでしたが、学校側は訴えを無視することは出来なかったようで、保護者たちは口々に『あの程度でダメなんて……』『誰も運動部の監督なんて出来ないよね』と言っています」(同)

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