田代尚機のチャイナ・リサーチ

日本経済が地盤沈下しているのになぜ日経平均株価は高値更新しているのか? 背景にある米国の対日政策の大転換

日経平均株価は最高値を更新(2月27日。時事通信フォト)

日経平均株価は最高値を更新(2月27日。時事通信フォト)

 日本株の上昇局面はいつまで続くのか。日経平均株価は2月22日、約34年2か月ぶりに過去最高値を更新した。長期の月足チャートでのブレイクアウト、強いモメンタムが出ている点などに注目すれば、ここからさらなる上昇も見込めるかもしれないが、バリュエーションを考えて、買いを躊躇する投資家もいるだろう。そもそも現在の相場環境は前回の最高値を付けた1989年12月当時と比べ、遜色がないほど良好なのだろうか。

 まず、当時と現在の経済規模を比較すると、1990年の名目GDP(出所はIMF)は3兆1966億ドルであり、2023年は4兆2106億ドル(季節調整済み、速報値、内閣府)だ。単純に両者を比較すれば、拡大しているように見える。一方、世界全体に占める日本の名目GDP比率は1990年には14.1%を占めていたが、2022年には4.2%にまで低下している。ちなみに、この数字がもっとも大きかったのは1994年で17.8%を占めており、当時と比べると日本経済の地盤沈下は著しい。また、2023年の景気が上向いていたというわけでもなく、7-9月、10-12月期の実質GDP(速報値、円ベース)は前期比でマイナス成長となっている。

 成長の原動力となる労働力人口(15歳以上、総務省統計局)は1990年末には6423万人であったが、2023年末には6933万人となっており、増えてはいる。ただ、広い意味での労働力の質(生産性、イノベーションを生み出す力など)を示す一つの指標となりそうな科学論文数(出所はNSF)をみると、2003年までは米国に次ぎ、第2位を確保していたがその後はずるずると順位を下げており、2022年には中国、米国、インド、ドイツ、イギリスに次ぐ6位となっている。また、国際経営開発研究所の世界競争力年鑑をみると、1990年には日本の競争力(総合順位)は1位であったが、2023年には35位にまで落ちており、過去最低を更新している。

 さらに米国への留学生数をみると、2004年には2万7925人(出所はNSF)でトップであったが、新型コロナウイルスが流行する直前の2019年には8900人、世界第8位まで順位を後退させている。これが大学院となるとさらに順位は下がり、2018年(2019年はデータなし)には2510人でコロンビアよりも低い16位となっている。

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