ただ、中国市場は巨大であり、経済規模は米国の70%(2022年、出所はIMF)に達している。前述の科学論文数では既に米国を超え1位となっており、イノベーションを推進する潜在的な力は高い。一方、一人当たりGDPは世界で70位(2022年、IMF)、米国の17%程度とまだ十分小さい点も、まだ成長余地があると捉えられる。
世界では対中貿易が対米貿易を上回っている国が多く、そうした国では米国に同調するのも容易ではない。しかも、欧州はウクライナ支援、ロシア制裁の反動で苦境の中にあり、米国は慢性的な貿易赤字、巨額に膨らんだ財政赤字を抱え、依然としてスタグフレーション発生リスクを無視できない状況にある。大統領選挙を秋に控え、政治が不安定なことも不安材料の一つだ。
もし仮に、バリュエーションが歴史的に極めて高い水準となっている米国市場が大きな調整を余儀なくされるようなことになれば、日本市場への影響は計り知れない。
結局このタイミングで日本株を買うかどうかは、米中覇権争いの行方、米国による対中デカップリング、デリスキング戦略の成功・不成功を予想することに等しいのではなかろうか。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。