中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

「朝起きると、妙に部屋が静かだ…」ガス、電気を止められた瞬間のリアル

 カップラーメン用のお湯が作れれば良いとばかりに、水を入れたマグカップを電子レンジに入れ、そのお湯を使って何とかカップラーメンを作ります。「なんとかなるじゃん♪」なんて思って過ごしていたある朝、目が覚めると、妙に部屋が静かなことに気づきました。冷蔵庫からまったく音が出ていない! こりゃあ、電気を止められた! この頃はデスクトップパソコンを使っており、電源がなくてはパソコンを立ち上げることもできない。そこで、慌てて電力会社に電話するとともに、ガス会社にも連絡をし、「料金を払うのでなんとか復活させてほしい」と伝えます。

 その日の仕事は、漫画喫茶に行ってなんとかしのぎました。

 この時、「やっぱり容赦ないもんだ」という恐ろしさを感じるとともに、自分が「ダメ人間」であることをあらためて突きつけられた気がします。ただ、意外なことに固定電話代だけは支払っていました。当時は仕事の都合上、電話とFAXが何よりも重要だったのにくわえ、請求書が汚い部屋でも目立つ形式だったため、キチンとコンビニで払っていたようです。

 しかし、それから5年、2000年代も中盤に入ると固定電話とFAXをあまり使わなくなります。そうすると「コレ、なくてもいいんじゃないか……」と思うようになり、ついつい危機感が薄まってしまった。

 そう、ガスを初めて止められた時と同じような感覚になってしまったのです。そして、以後、頻繁に電話を止められるようになり、後日支払をするも翌月の請求書には「延滞料」のようなものが数十円乗せられていました。

 私の電話料金支払い忘れ癖はますますひどくなります。ある時、これまでの分をまとめて支払ったのですが、電話が繋がらない。電話会社に問い合わせたところ、「あなたは度重なる延滞のため、当社のブラックリストに載り、もう固定電話は契約できない」というようなことを告げられました。

 というわけで、その3年後に私は株式会社を立ち上げることになるのですが、固定電話はない会社です。もしかしたら会社名で契約はできるのかもしれませんが、それは試していません。ただ、1990年代から2000年代前半のように「固定電話が信用の証」という時代でもなくなっているので、もう契約できなくても構わないかな、とも思っています。ダメ人間はなかなか治らないものです……。

【プロフィール】
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう):1973年生まれ。ネットニュース編集者、ライター。一橋大学卒業後、博報堂入社。企業のPR業務などに携わり2001年に退社。その後は多くのニュースサイトにネットニュース編集者として関わり、2020年8月をもってセミリタイア。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)、『縁の切り方』(小学館新書)など。最新刊は『恥ずかしい人たち』(新潮新書)。

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