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狩猟ビジネス最前線 DX化でハンター、飲食店、消費者が喜ぶ仕組み作りも

Fantに協力している食肉処理施設「やせいのおにくや」(足寄町)を経営する儀間雅真氏は、自身もハンター。高野氏は全国で協力施設を増やすため、見本として自社の食肉処理施設を今月開設する予定

Fantに協力している食肉処理施設「やせいのおにくや」(足寄町)を経営する儀間雅真氏は、自身もハンター。高野氏は全国で協力施設を増やすため、見本として自社の食肉処理施設を今月開設する予定

ハンターにジビエ肉を注文できるシステム

「狩場や狩猟技術の情報を猟友会の仲間だけで共有したり、徒弟にのみ教えるといった閉鎖的な世界が狩猟業界には残っており、それでは若い新米ハンターが育たない。誰でも自由に情報を共有できるウェブサービスを提供する会社を立ち上げました」

 高野氏が20~30代のハンターをメインターゲットに据えて開発した狩猟者向けSNS「Fant」には現在、北海道から沖縄まで全国から約1000人のハンターが登録。狩場や狩猟の方法、日時などについてハンター同士で記録を共有し、交流している。

ジビエ肉を求める飲食店とハンターをつなぐFantの仲介事業の仕組み。報酬を事前に提示するため、ハンターも飲食店も納得できる価格で取引ができる

ジビエ肉を求める飲食店とハンターをつなぐFantの仲介事業の仕組み。報酬を事前に提示するため、ハンターも飲食店も納得できる価格で取引ができる

 2021年には、飲食店や食肉卸がハンターにジビエ肉を注文できる流通システム「ギルド肉プロジェクト」事業を新たに開始した。飲食店が「○月○日までにエゾシカを報酬×円で獲ってきて」と発注すると、Fantがハンターにつなぎ、狩猟者は仕留めた指定の獲物を食肉処理施設に搬入する。飲食店から狩猟者に報酬、処理施設に解体費用、Fantに取引手数料が支払われる仕組みだ。

「狩猟のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を進めていきます。ハンターの評価制度やレベルアップ制度をつくるなどゲーミフィケーション(ゲーム化)もしていきたい。飲食店は実力のあるハンターを可視化でき、ハンターはやりがいと収入を得られる。消費者は美味しいジビエを食べられる。有害鳥獣問題の解決とジビエの利用率アップにもつなげたい」

 狩猟の世界をもっと楽しくしたい──。頼もしい起業家の目で、新しい狩猟文化の創造にもピタリ照準を合わせる。

撮影/太田真三 取材・文/上田千春

※週刊ポスト2022年1月28日号

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