今夏の節電要請を受け、企業もオフィスの一部照明を消すなどの対策を実施しているが、仕事をする上で「最低限の明るさ」は必要である。就業に必要な明るさについて、基準はあるのだろうか。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
電力不足の際、都庁がフロアの天井照明を消し、職員は各デスクのパソコンの明かりだけで作業をしていました。その様子に感化された会社の上層部が「うちでもやろう」と言い出して室内の照明を消すことに。私は目に疾患があり、パソコンの明かりだけではしんどいです。この方針、間違っていませんか。
【回答】
消灯した職場で、パソコンの明かりだけで作業をしているのなら、執務時間中の消灯になります。手元はよくても、結局は室内が見づらく、移動の際は危ないのではないかと心配です。
職場の作業環境について定める『労働安全衛生法』は、労働者の危険や健康障害を防止するため、労働者の就業場所で必要な措置を講じるよう事業主に求めています。
その中には、採光や照明も含まれます。そして、事務所における具体的な措置を定めた事務所安全衛生規則によると、室の作業面の照度について製図作業や約2mm以下の文字を継続して見る作業などの精密作業では、300ルクス以上、一般の作業でも150ルクス以上を必要としています。
さらに、今年の12月からは、一般的事務作業では、全て300ルクス以上が必要と一層厳しくなり、また、事業者は半年ごとに照度を定期点検する義務があります。
室内の天井灯を消しても、手元の作業面の照度が、これ以上あれば問題はないですが、計測してみないとわかりません。もし、照度が不足していたら、法令違反です。