森口亮「まるわかり市況分析」

日銀の「YCC修正」を市場はどう評価したのか 植田総裁「為替市場のボラティリティも考慮」発言にも注目

金利、株、為替はどう動いたか

「YCCの修正」発表は市場に大きな影響を与え、10年金利は一時0.575%まで上昇しました。株価やドル円は、発表当初こそ上昇と下落を繰り返しましたが、結果的には発表前よりも高い水準まで戻して終わっています。この円安・株高は、市場参加者が修正を受け入れ、それをポジティブに評価した結果と言えるかもしれません。

 一方、日銀の声明文には、「長期金利の上限を厳格に抑えることで、債券市場の機能やその他の金融市場におけるボラティリティに影響が生じるおそれがある」という一文が含まれていました。これについて、植田総裁は「為替市場のボラティリティも考慮している」という発言もしています。この新たなスタンスからは、YCC修正による為替への影響をより深く考慮していることが考えられます。

 2022年は米国の金利が歴史的な上昇を記録したのに対して、日本の金利はほぼ不変でした。この金利差が大きな円安をもたらし、「YCCが為替の投機を助長している」との声も上がっていました。そのため、この修正によって、日銀はそのような為替のボラティリティを一定程度コントロールしようとする意向を示したと言えるでしょう。

今後の見通しは?

 今回のYCCの修正では、金利や為替の動きに大きな影響を及ぼしました。修正前後の市場の動きを見ると、市場参加者たちはさまざまな視点からこの修正を評価していることがわかります。

 今後の市場参加者の受け止め方やYCCの運用の方法については、これから見定めていく必要があります。物価上昇圧力が続くようであれば、日銀のYCC運用もまた変わる可能性があります。値上げの動きが続くのか、また、その影響がどの程度市場に影響を及ぼすのか。これらは多くの市場参加者が注目する重要な要素となります。9月以降の日銀会合からも目が離せません。

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