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「生前贈与は年110万円まで非課税」の認識だけでは不十分 名義預金と贈与の線引きは「誰が通帳を管理しているか」がポイント

暦年贈与と認められないケースも(イラスト/河南好美)

暦年贈与と認められないケースも(イラスト/河南好美)

 相続にあたって、遺産が「3000万円+600万円×法定相続人数」の基礎控除より多いと、控除額を超えた分に対し相続税が課税される。生前から遺産を減らし、基礎控除の範囲内に収めることを目指すのが相続税対策の基本となる。

 子や孫に年間110万円までの非課税贈与を続けることで財産を生前に渡していく「暦年贈与」は相続税対策の王道だ。しかし、手続きのミスで暦年贈与と認められないことがある。

 岡野相続税理士法人代表税理士の岡野雄志氏が指摘する。

「生前贈与をしていたつもりが、被相続人が死んだ時に相続財産に組み込まれて相続税を課されるケースが少なくありません。贈与は契約を結んで進めるものであり、渡す側(贈与者)と受け取る側(受贈者)の意思の確認が必要です。“将来に備えて子供にお金を残したい”と子供名義の口座に預金を積み立てているだけの人は、親の『名義預金』として相続財産に戻される可能性が高い」

 贈与される側が口座の存在を知らなかった場合だけでなく、口頭で伝えていても、子がお金を使ってしまうことを心配して印鑑や通帳を親が管理している場合も問題になりかねないという。

「名義預金か贈与かの線引きは、“誰が通帳を管理しているか”が最も重要です。子供や孫が自由にお金を使える状態が望ましいのです」(岡野氏)

 暦年贈与と認められなかった場合、相続税の申告後に税務署から計上漏れを指摘される可能性がある。

 こうした事態になるのを防ぐには、「贈与契約書」を作成するなどの対策が必要となる。「贈与契約書」と題した書面に「いつ・誰が・誰に・何を・どのように」贈与したかを明確に記したうえで2通用意して贈与者と受贈者それぞれが保管する。

「贈与は年110万円まで非課税」と認識しているだけでは対策が不十分になりかねないのだ。

※週刊ポスト2023年9月15・22日号

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