SNSでは誰もが自由に発言できるが、SNS上での発言に起因するいざこざも少なくない。なかには自分の意に反して批判が集まり、炎上につながることもある。そうした炎上に加担しているのは、正義を振りかざす「極端な人」であることが多いという。わたしたちは、そうした「極端な人」からどのように身を守ればよいのか。新刊『世界はなぜ地獄になるのか』で、SNSがなぜ荒れるのかについて分析している、作家・橘玲氏が解説する。
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SNSには正義を振りかざす「極端な人」がいる。だがそれは、社会の落ちこぼれでもなければ、カルトのような異常な信念をもっているわけでもない。SNSの炎上を研究する山口真一(ネットメディア論、情報経済論)は、炎上に加担するのは「男性」「世帯年収が高い」「主任・係長クラス以上」という属性の持ち主だという。仕事が忙しくても、同居する家族がいても、2時間もあれば数百件は書き込めてしまうから、「暇人」である必要はないのだ。山口は次のようにいう。
〈まだ少し信じられない人もいるかもしれないが、自分の周りの人を想像してみて欲しい。あなたの周りに、いつも攻撃的で部下を否定してばかりいる、そんな上司はいないだろうか。おそらく、この問いについては「いるいる」と答える人が多いだろう。まさに、そういった人が「極端な人」であり、ネットでもまた暴れているというわけだ。〉(山口真一・著『正義を振りかざす「極端な人」の正体』光文社新書より)
「極端な人」は、会社でそれなりの役職にあっても、自分は正当に評価されていないと不満をつのらせているかもしれない。そのルサンチマンは現実社会では一定程度抑制されているが、SNSではブレーキが外れてチャッターをすべてぶちまけてしまう。あなたがネットで出会うのは、こういう相手なのだ。
だとしたら、「なにをしても無駄」というのはすぐにわかるはずだ。リアルな世界では、「不愉快な奴だ」と思っても、積極的にかかわって相手の性格や考え方を変えようとは思わないだろう。だとしたら、それが文章だけで(それもたった140文字で)できるわけがない。
自分の身を守る方法は、リアルでもバーチャル(ネット)でも同じだ。もっとも重要なのは、こういう「極端な人」に絡まれないこと。そのための最低限の原則は、「個人を批判しない」だ。なぜならこのひとたちは、自分が批判されたと思うと、常軌を逸して攻撃的になるから。自分が「被害者」で、なおかつ「正義」だと信じている相手に対しては、ほぼ打つ手はない。