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SNSで正義を振りかざす「極端な人」から身を守る方法 相手に反論するのは“最悪の対応”

 それでもあなたの発言に不愉快なコメントをする者はいるだろう。そのときは、ただ無視するか、ブロックする。「批判されたら反論しなければならない」と思っているひともいるようだが、これは最悪の対応だ。「極端な人」は、自分に対するどのような反論も、善と悪との戦いにしてしまう。あなたは「悪」のレッテルを貼られ、泥沼に引きずり込まれることになる。

 もうひとつ重要なのは、自分がリベラル(フェアネス)の立場で発言していることをつねに明確にしておくことだ。「(私は)どっちかと言うと差別のない人間なので」などといいながら、「同性のカップルが隣に住んでいるのはちょっと嫌だ」と発言した首相秘書官がいたが、これでは更迭(キャンセル)されて当たり前だ。リベラリズムの原則を共有することは、リベラルな社会で生きていくために絶対に必要なリテラシーなのだ。

「そんなに面倒ならSNSなどやらなければいい」と思うひともいるだろうし、これも一理あるが、SNS時代には個人の価値がフォロワー数で決まるようになる。そうなると、エビデンスを呈示できる専門分野では積極的に発言してフォロワーを集め、それ以外の領域では炎上リスクのない投稿(ネコの写真など)にとどめるのがいいかもしれない。

「そんなことでは社会はよくならない」と批判されるかもしれないが、(私を含む)大半のひとにとって、人生で重要なのは、自分や家族がよりゆたかに、より幸福に暮らせるようになることで、社会正義の実現ではないだろう。キャンセルの標的にされたときの甚大な(取り返しのつかない)損失を考えれば、これがほとんどのひとにとってもっとも合理的な選択になるのではないか。

【プロフィール】
橘玲(たちばな・あきら)/1959年生まれ。作家。国際金融小説『マネーロンダリング』『タックスヘイヴン』などのほか、『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『幸福の「資本」論』など金融・人生設計に関する著作も多数。『言ってはいけない 残酷すぎる真実』で2017新書大賞受賞。リベラル化する社会をテーマとした評論に『上級国民/下級国民』『無理ゲー社会』がある。最新刊は『世界はなぜ地獄になるのか』(小学館新書)。

※橘玲・著『世界はなぜ地獄になるのか』より一部抜粋して再構成

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