詐欺犯が仕掛ける「リアルな取り調べ」
ただし最初に接触して来るのは“警察官”だけではない。“総務省”や“総合通信局”を名乗る者から「あなた名義で契約された携帯が犯罪に使われている」との連絡があり、「警察へ転送します」と警察官につながれるパターンもある。また、会話の途中で警察官が「ここからは検事が引き継ぎます」と言って検察官につなぐこともある。
そこで展開されるのは「リアルな取り調べ」である。警察から検事への引継ぎパターンを経験した遠藤さんが振り返る。
「刑事は『あなたは容疑者として固まっているわけじゃないから、あなたのことを疑うわけじゃないけど、信じるわけでもありません』ともっともらしいことを言って、そんなものかと思いました。
取り調べの最中、刑事が『今、新潟県警に検事さんが来ているから、検事さんの部屋まで調書を渡しに行きます』と言って、その後、廊下を移動するような音がしてからコンコンとドアをノックする音が聞こえました。するとドアの向こうから『……はい』というぶっきらぼうな検事のダミ声がして、『失礼します!』と刑事が声をかけてからガチャッとドアを開ける音がして、それから検事の自己紹介が始まりました。今にして思えば、そうとう手の込んだ芝居でしたね……」
取り調べと称して真っ赤な作り話をしている最中、周囲との連絡を遮断し、ターゲットを1人にさせることも犯人の手口だ。遠藤さんは「大切な捜査なので誰にも聞かれてはいけません。もしも誰かに話したら漏洩罪になります」と言われて、家から外に出て1人になることを促された。
「電話をつないだまま自宅マンションの駐車場に停めた自家用車の中に移動すると、『家の駐車場ではなくもっと離れたところまで行ってください』と言われたので、車を運転して近くのスーパーまで移動しました。そこまでやらせるんだ、と思いました」(遠藤さん)