巧妙化する詐欺犯の最新手口とは(写真:イメージマート)
2000年代以降、「オレオレ詐欺」の手口が登場してから瞬く間に広がった「特殊詐欺」。その手法は年々“進化”しており、2024年の被害額は721億5000万円と過去最悪を記録している。詐欺犯のターゲットは高齢者だけではない。現役世代が騙されることも実際にある。報道などを通じて連日のように被害が周知されているにもかかわらず、人はなぜ騙されるのか。シリーズ〈ルポ「特殊詐欺」の最新手口〉、フリーライターの池田道大氏が、実際に200万円を振り込んだ被害者と、寸前で被害を免れた証言者、2人のケースをレポートする。【全4回の第3回。第1回から読む】
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「特殊詐欺なんて、引っかかるほうがおかしいよ(笑)」「狙われているのはお年寄りでしょ」とタカをくくっている人は多いはずだ。だが最近は高齢者ばかりでなく、現役世代をターゲットとする手口も横行しているという。
なぜ人は特殊詐欺に騙されるのか──。被害者の証言からまず浮かび上がる要因は、犯人が「警察官」などを騙るようになったことだ。昔は実在する子供や孫を名乗る者が「会社のカネを横領してしまった。その金額を振り込んで欲しい」などと騙す、いわゆる「オレオレ詐欺」が多かったが、現在は警察官を名乗る人物が「あなたの銀行口座が犯罪に利用されています。犯罪を行っていないことを証明するため、お金をお振り込んでください」と連絡してくるケースが増えているという。
この手口で騙されて計200万円を振り込んだ都内在住の会社員・小倉和秀さん(仮名・40代)が語る。
「いきなり容疑者扱いされて、『取り調べを行う』と言われて面喰らいました。でも本物の警察だったら下手に逆らうと身柄拘束などをされるかもしれない。罪がないのに罪になるのも嫌だと思い、とりあえず相手の言うことを聞こうと思いました」
新潟県警の警察官を名乗る男からスマホに電話があり、「あなたを特殊詐欺グループの一員として取り調べる」と言われた自営業の遠藤昭さん(仮名・50代)はこう語る。
「もともと僕は小心で市役所や税務署からの連絡にも焦るタイプで、警察からいきなり連絡があって正直ビビりました。しかも『今すぐ新潟県警に来てください』と言われて、『仕事があってムリです』と返すと、『なぜ来られないのですか』と責められた。そのまま『でしたら、この電話での取り調べに切り替えますか』と聞かれたので、つい『はい』と答えてしまった。先手、先手で攻められて、完全に相手のペースに乗せられました」
詐欺グループは、逮捕権など絶大な権力を持つ警察官を装い、ターゲットの心を支配しようとするのだ。