特殊詐欺は「自分の身にいつでも起こり得る犯罪」
なぜ自分は騙されてしまったのか——。悪夢の被害から数か月が経過した現在、営業職でもある小倉さんが改めて振り返る。
「犯人の手口は営業トークとしてはものすごくハイレベルです。まず不安にさせて、それから解決策を提示し、そのために自分たちは協力できますよと畳みかける。どれほど警戒心を強くしている人でも、この申し出には乗っかってしまうでしょう。まさに“悪魔の営業トーク”です。正直、被害に遭うまでまさか自分の身に起こり得るとは思っていませんでしたが、意外と普通に起こるんだなと実感しました。多くの人も、オレオレ詐欺を自分の身にいつでも起こり得る犯罪としてとらえてほしいですね」(小倉さん)
警察庁はオレオレ詐欺の周知にあたり、「警察官がSNSやビデオ通話で連絡を取ることはありません」と強調する。また、警視庁や他府県の警察を名乗る者からの電話があった場合は、「相手に『所属、担当部署、氏名、内線番号』を確認し、最寄りの警察署に連絡してください」と呼びかけている。
「特殊詐欺なんて引っかかる方がおかしい」という認識が通用しないのは、被害件数や被害額が増え続けていることからも明らかだ。まずは犯罪の手口を知り、そして何よりも「自分だけは大丈夫」と思い込まないことが、「悪魔の営業トーク」に乗せられず、大切なお金を守ることにつながるのだろう。
本記事では、警戒心が強い人でも乗せられてしまう、詐欺グループの巧妙な話術について紹介した。関連記事〈【特殊詐欺被害に遭うか否かの分水嶺】200万円を振り込んだ40代男性と、すんでのところで思いとどまった50代男性の明暗を分けた“ちょっとした差”〉では、実際に200万円を騙し取られた小倉さんと、寸前に被害を免れた遠藤さんの“明暗”を分けたポイントについて解説している。
取材・文/池田道大(フリーライター)