なぜ利下げに慎重なのか?
トランプ大統領は景気後退を避けるために利下げを求めていますが、FRBには「デュアルマンデート」と呼ばれる2つの使命があります。それは「雇用の最大化」と「物価の安定」です。
現在のアメリカの金融政策は、利下げに向かう流れにあります。過熱していたインフレを抑えるための高金利から、徐々に通常水準へ戻す段階に入っているのです。
直近の3月CPI(消費者物価指数)は2.4%と、比較的落ち着いた数字が発表されました。しかし、過度な利下げで金融が緩和されすぎると、かえってインフレを再加速させてしまう懸念があります。
こうした背景から、パウエル議長は慎重な姿勢を見せたのではないでしょうか。
ウォラーFRB理事は利下げを支持
そんな中、FRBのクリストファー・ウォラー理事は、トランプ大統領が掲げる関税政策によって米経済が大きな衝撃を受ける可能性があるとして、景気後退(リセッション)を避けるためにFRBが利下げを実施する可能性があると、4月14日に発言しました。
金融政策において中立的な立場をとり、現在もFOMC(連邦公開市場委員会)の投票権を持つウォラー理事のこの発言は、利下げへの現実味を感じさせたことから、同日の株価は前日比で上昇して取引を終えました。
とはいえ、単純に利下げで景気を支えれば良いというわけではありません。4月11日に発表された4月ミシガン大学の消費者態度指数(速報値)によると、消費者信頼感は予想を大きく下回る50.8(予想は54.5、値が高いほど、経済に対し消費者の楽観的見方が高い)となり、1年先の期待インフレ率は1981年以来の高水準を記録しました。
すでに米国の消費は減速傾向にある中で、インフレ率がさらに上昇すると見込まれています。ここに利下げが加われば、FRBの手に負えないインフレ加速が起こるリスクも想定されます。
その結果、景気の減速とインフレ率の上昇が同時に進む「スタグフレーション」のリスクを警戒する声も出始めています。