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大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

大前研一氏が「国会は緊張感のない“ダメな会議”の典型」と断ずる理由 答弁を官僚に頼り、想定外の質問に対応できない政治家はあまりにも勉強不足

ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める大前研一氏

ビジネス・ブレークスルー(BBT)を創業し、現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める大前研一氏

 だが、本連載で何度も述べているように、現在のAI(人工知能)社会時代は、答えがある問題はネットで検索すればすぐにわかるので、単なる知識は何の意味もない。つまり、このまま旧態依然とした文科省教育を続けていたら、21世紀の世界で活躍できる人材は育たないのである。

 ほかにも日本には「答えがない」問題が山積している。たとえば、日米安全保障だ。トランプ大統領は日米安全保障条約について「アメリカは日本を守らなければならないが、日本はアメリカを防衛する義務がない」と「片務性」を問題視している。

 しかし、2016年に施行された安全保障関連法(平和安全法制)では、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合や「米軍の武器等を防護するため」には自衛隊が武力行使できる。

 つまり、アメリカに対する武力攻撃が発生したら、事実上、自衛隊は「集団的自衛権」を行使して米軍とともに戦うことが可能になっているわけで、トランプ大統領の指摘は事実誤認なのである。

 にもかかわらず、国会ではこの問題に関する討論が全くない。トランプ大統領の誤解や「誰が日本を守るのか」という本質的な問題について議論できる国会議員がいないのだ。

 さらに、天皇制と皇位継承問題や夫婦別姓問題など、国会で議論すべき難問は山ほどある。ところが、今の国会議員はそういう国家の根幹にかかわる問題に頬被りし、票を意識した瑣末なことばかり議論している。

企業の重要会議は「生きるか死ぬか」

 揚げ句の果ては、村上誠一郎総務相が衆院本会議でトイレに行くため議場を離れてしまい、審議がストップするというハプニングがあった。額賀福志郎議長が「やむを得ない事情で議場を離れたが、よく事情を聞いた」と述べて審議再開を宣言すると、ふざけたヤジと拍手が交錯した。

 国会議員は誰も彼もが弛みきっているわけで、これが国権の最高機関にして国の唯一の立法機関の最も重要な会議の現実なのである。

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