アクティビストのターゲットになる側面
一方で近年は、こうした創業家の存在感が強い日本企業が、外資系企業や「アクティビスト(物言う株主)」のターゲットになっている面もある。代表例が流通大手のセブン&アイ・ホールディングスの伊藤家(14位)だ。
2024年8月に北米でコンビニ事業を展開するカナダのアリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けると、傘下にイトーヨーカ堂やヨークベニマルなどを置く中間持ち株会社を新設。代表取締役会長に創業家の伊藤順朗氏を据えた。経済ジャーナリストの河野圭祐氏が指摘する。
「伊藤家の資産管理会社『伊藤興業』はセブン&アイHDの株式を約8%保有する第2位の株主です。順朗氏と伊藤興業は会社を守るために自社株買収(MBO)を試みましたが、資金が集まらず断念。日本屈指の大企業と創業家でも巨大外資に立ち向かうのが困難だとわかります」
現経営陣とアクティビストを巻き込んだ激しい戦いを繰り広げたのが富士ソフトの野澤家(36位)。
「1970年に野澤宏さんが創業した独立系のシステム開発会社ですが、米投資ファンド・KKRに買収攻勢を仕掛けられました。野澤家も米投資ファンドと組んで抵抗しましたが、KKRに軍配が上がった。5月にも非上場化される見込みです」(森岡氏)
アクティビストが攻勢をかける際に、「創業家による支配の不透明さが招く経営不全を追及するケースが目立つようになってきた」(同前)という。
株式の過半を保有せずに“権威ある存在”となるのが上場企業の創業家の特徴だが、経営の舵取りを間違ったと見咎められると外資の攻勢を受けかねない現実もあるのだ。
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※週刊ポスト2025年5月9・16日号