暴落が発生した時に想定される「真の底値」をどう見通すのか(写真:イメージマート)
2020年のコロナ・ショック以降、○○ショックとよばれる大相場は定期的に発生している。そうした激しく動く相場に個人投資家はどう立ち向かえばよいだろうか──。年378万円の配当収入を得て、FIREも達成した億り人・投資家「長期株式投資」氏(ハンドルネーム)は、どんな相場でも、事前に準備しておけば、何ら恐れる必要はないと考える。では、そのためにはどんな準備が必要なのか。同氏の新著『フルオートモードで月に31.5万円が入ってくる「強配当」株投資』(KADOKAWA)より一部抜粋・再構成して、株価暴落時の生存戦略の詳細を紹介する。
株価暴落時における生存戦略
株式投資は、長く続けていれば自ずとリターンもついてくるプラスサムの世界ですが、株価が下落し続けると、「どこまで下がるのだろう」と不安になることも多いと思います。その結果、精神的な負荷に耐えられずに、株式投資をやめてしまった個人投資家が後を絶たないというのがこれまでの株式投資の歴史です。
イタリア、ルネサンス期の政治思想家で、フィレンツェ共和国の外交官でもあった、ニコロ・マキアヴェッリは次のように言っています。
「予測しなかった事故は、立ち直るのに非常な困難をともなう。だが、あらかじめ考えにいれておけば、たとえ不意を襲われたとしても、容易に立ち直れるものである」
『マキアヴェッリ語録』(塩野七生/新潮社)より
単に続けていればいいだけの株式投資を難しくしているのが株価暴落です。しかし、暴落がどのようなものかを歴史から学び、事前に準備しておけば、何ら恐れる必要はありません。
逆に最悪がどの程度かを理解しておけば、株価が暴落中で安くなっている時にも買うことができ、暴落をチャンスと認識するようになるでしょう。
それではまず、世界の暴落史に残る規格外の大暴落を確認していきます(別掲図4-7)。最も有名なのは、1929年の世界恐慌でしょう。
株価暴落時の下落率とその下落期間
ダウ平均株価はピーク時の386ドルから34カ月かけて41ドルまで下落します。その下落率は脅威の89%。常軌を逸しています。
このウォール街大暴落に比肩するのが日本の資産バブル崩壊です。1989年ピーク時の日経平均株価はザラ場ベースで38957円。最安値をつけたのが226カ月後の2008年で、その下落率は82%となっています。
いずれの暴落も尋常ならざる事象であったことは容易にうかがい知ることができます。
上記の世界恐慌や日本のバブル崩壊については、人間の欲望によりバブルが醸成され、臨界点を超えたところで崩壊するという本質的な部分からの学びがあります。
ですが、情報通信網が整備され誰もがリアルタイムでマーケットにアクセスできるようになった21世紀型の暴落に対処するためには、2000年以降の暴落を参考にするのが適当でしょう。
具体的には2000年のITバブル崩壊、2007年のサブプライム危機に端を発した2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災、2015年のチャイナショック、2016年のブレグジット決定、2020年のコロナショックです。
100年に1度の金融危機と呼ばれたリーマンショックの下落率は62%、ITバブル崩壊の下落率が64%であることを考えると、直近高値からの最大ドローダウンは概ね6割強となっています。
また、底値をつけるまでの下落期間はITバブル崩壊で36カ月です。その後の暴落では、36カ月を超える下落期間は発生しておらず、3年程度を最悪の目安と考えればよいでしょう。
以上のことから、株価暴落における最悪シナリオでは下落率60%程度、下落期間3年程度を想定してください。