*16:18JST アーレスティ Research Memo(8):2026年3月期は減収も米国工場黒字化で増益、最終利益も黒字化へ
■アーレスティ<5852>の今後の見通し
1. 2026年3月期の業績見通し
2026年3月期通期の連結業績は、売上高161,200百万円(前期比1.1%減)、営業利益3,600百万円(同6.8%増)、経常利益3,100百万円(同1.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,300百万円(前期は2,892百万円の損失)と減収、増益を見込む。売上面では米国での受注自体は順調に伸びており、中国での中資系顧客との取引拡大、インドでの第2工場稼働による増産対応などの増収要因がある一方で、米国関税の影響により主に日本、メキシコで生産する最終仕向地が米国である製品については一定の減少を織り込んでいる。顧客の生産計画をベースとしつつも、先行きの不透明さがあるなかで従来よりも保守的に販売計画を設定し、全体の受注量は前期比横ばいを見込んでいる。損益面では、米国工場の収益改善に最優先に取り組み、期中での黒字化を実現することで北米セグメントの大幅な増益を確保する。また、引き続きグローバルでの生産体制の最適化・合理化による固定費の削減やさらなる生産性改善など収益構造改革に注力し、受注変動への耐性を一層強化するとともに、エネルギー費用や労務費の高止まりに対しても適正な価格転嫁によりコスト増加影響を吸収する。なお、同社の孫会社であり中国で金型を製造している阿雷斯提精密を売却することを決定した。2025年7月に持分を譲渡する予定であり、譲渡益8億円は特別利益に織り込んでいる。金型提供先である同社グループの広州・合肥工場の受注量が大きく減少し、中長期にわたって安定的な収益確定が難しいため生産ポートフォリオの再編が不可避と判断した。
2. 事業セグメント別業績見通し
(1) ダイカスト事業 日本
国内のダイカスト事業の売上高は前期比4.6%減の61,600百万円、セグメント利益は同41.8%減の1,350百万円を見込む。米国関税の影響を受けた国内の米国向け自動車生産の一定の減少による受注量の減少を見込む。同社グループ間での米国向け生産補完については、米国での生産状況、価格動向などを睨みながら製造原価の最適拠点からの輸出を検討していく方針である。損益では国内の生産性向上による収益改革が進捗しており、前期に実施した希望退職による固定費削減などの効果は見込めるが、減収に伴う減益を見込む。
(2) ダイカスト事業 北米
北米のダイカスト事業の売上高は前期比0.6%増の50,000百万円、セグメント利益は1,617百万円の損失を計上した前期より2,417百万円改善し800百万円の黒字化を見込む。北米市場(米国、メキシコ)においては、主要顧客のHEVの生産拡大により受注は堅調に推移している。収益の悪化した米国工場については、日本からの支援強化による緊急対応の結果、納入トラブルは収束し、ものづくりは正常化しつつあり、本社支援とガバナンス強化の確実な実施により通期黒字化を計画する。再建の柱として、個別製品の採算性の改善、品質ロスに着目した生産性の改善、ガバナンスとマネジメントの強化、労務費など製造原価を考慮したメキシコ工場との生産最適化など北米リージョンでの経営資源の最適化の4本を掲げている。また、メキシコでは今後欧米系Tier1※とのビジネス拡大を目指す。
※ 自動車メーカー(OEM)に直接部品やシステムを供給するサプライヤー
(3) ダイカスト事業 アジア
アジアのダイカスト事業の売上高は前期比8.9%増の39,800百万円、セグメント利益は同47.5%減の950百万円を見込む。インドでの受注が伸長しており、インド第2工場は試験操業段階だが、今後は量産段階に進み、受注量の増加に合わせて生産能力を順次増強していく方針だ。一方、中国市場においても前期第4四半期よりBYDのPHEV向け部品を製造するTier1サプライヤー向けの新規製品の量産が開始するなど、同社製品の品質と高い生産性による安定供給を評価する中資系顧客とのビジネスの拡大を見込んでおり、2024年度の非日系シェア21%を2027年度に75%まで引き上げる計画だ。一方で、中資系顧客の受注変動を考慮し、利益は保守的に設定している。
(4) アルミニウム事業・完成品事業
アルミニウム事業の売上高は、アルミニウム市況が落ち着くことを想定して前期比2.9%減の7,000百万円、セグメント利益は同32.7%増の300百万円を見込む。完成品事業の売上高は、半導体工場の需要がピークを過ぎたこともあり同42.7%減の2,800百万円、セグメント利益は減収に伴い同74.9%減の200百万円を見込む。完成品事業は、半導体製造市場が米国、インドで伸長すると同社では捉えており、今後海外での販路確立と拡販を目指す。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)
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