「3分割」売買でリスクを分散する
より具体的な投資手法についてはこう話す。
「私は時の流れを“戦時”と“平時”に分けて考えています。コロナショックや今回のトランプ関税ショックで暴落した“戦時”に買った株は、反動で大きく値上がりする可能性が高く、2倍、3倍になったりする。逆に、“平時”に買った株はあまり値上がりしないので、1.5倍くらいになれば売ります。平凡ですが、PERやPBRなどの代表的なバリュー指数と株価を比較して、チャートを見定めてテクニカル分析で売り買いのタイミングを決める。私は、買う時も売る時も『3分割』します」
「3分割で売買する」とはどういうことか。
「チェックしている銘柄の株価が自分のエントリーポイントに来たら、まず『打診買い』をします。私は証券口座を楽天証券、むさし証券、SBI証券の3つ持っていて、同じ銘柄でも口座を分けて買います。つまり、『打診買いで200万円』『下がってきたら別の口座で200万円買い』『さらに下がれば別の口座で200万円買う』というかたちにして、売る時も3回に分けます。
たとえば、『底値で買って最高値で全部売る』というのが理想ですが、大抵はうまくいきません。それなら分割で取引して平均値化しようと思った。インデックス投信が最強と言われるのは、市場の平均を取るからです。運用成績を上げようと思ったら個別株がいいのですが、個別株にインデックスの良さを取り入れようと思って3分割するようになりました。特殊かもしれませんが、私にはこれが合っているのです」
売買を3回に分けることでリスクを分散させ、口座も分けることで「別の取引」と認識する。それにしても120銘柄を3分割して判断するのだから大変な手間と労力がかかる。
「私の投資はハウス栽培のようなものです。イチゴやナスなど、いろいろな野菜や果物を育てて、『まだ青いな』『そろそろ収穫だな』と判断していく。たくさん育てていると、焦ったり欲望に支配されにくくなると思うので、決めたルールに従って機械的に収穫します。感情をコントロールすることがとても大事で、『イチゴは育ちが悪いけど、ナスはよく育っているから収穫しよう』というのは、ファンドマネージャーになった気分です」
自らが決めたルールに従って冷静に売買する仕組みを作り、実践しているという上岡氏は今、どのような銘柄に注目しているのか。関連記事『《資産6億円の上岡正明氏が厳選》長期保有で値上がりが期待できる割安銘柄6選 価格転嫁の余地が残されている製紙業界、生成AIの普及で高まる電力需要が追い風の企業も』の一覧表で詳しく語っている。
【プロフィール】
上岡正明(かみおか・まさあき)/1975年生まれ。宣伝広報、イベント企画などのコンサルティング会社、(株)フロンティアコンサルティングの代表取締役にして投資家。大手メディアで経済記者・経済コメンテーターを務める傍ら、株式投資に関する著書はのべ26冊を数え、累計105万部に達している。大学時代に放送作家をして稼いだ資金200万円を原資に投資を始め、現在の資産は6億円。株式投資情報を発信するYouTubeチャンネル登録者は30万人、Xのフォロワーは8万人を誇る。
公式Youtubeチャンネル:https://www.youtube.com/@kamioka01
公式X:https://x.com/kamioka01
取材・文/清水典之