市場全体の大きな下げは頻繁に起こっている
長期にわたって投資をしていれば、いい時もあれば悪い時もある。利益が乗れば驕り高ぶるし、暴落相場では気持ちが腐ってしまうものだ。元証券アナリストのさかえだいくこさんは、うまくいかない時はうまくいかない現実を受け入れ、つらい時期をどう乗り切るかで長期的な投資成績は変わってくるという。
日本株の長期投資でFIREを達成したさかえださんの新刊『2倍株・3倍株がぽこぽこ生まれる のんびり日本株投資』(すばる舎)より、一部抜粋・再構成して紹介する。
大きなうねりには誰も勝てない
株式投資に限りませんが、何事もいつもうまくはいきません。仕事でも日常生活でも、いいことばかりが続くことはまれです。ただ、仕事や日常生活であれば、うまくいかないことに対して自分が関与可能なことも多く、ある程度はコントロールできます。
株式市場はそうはいきません。株式市場は巨大です。東証プライム市場だけで、時価総額の合計はおよそ900兆円。東証では毎営業日、兆円単位の金額が取引されています。究極的には、何兆円ものお金を持っていれば市場をある程度コントロールすることもできるでしょうが、それでも思いどおりにできる範囲には限りがあります。この世の誰にも、株式市場全体をコントロールすることなどできません。
個人投資家は、株式市場全体で動く金額から見れば、非常に少ない資金しか保有していません。その少ない資金で巨大な資本がうごめく市場に飛び込み、プロの投資家と同じルールで勝負しています。市場にはひとり1票の選挙のような公平さはまったくありません。機関投資家などごく少数の主体が巨大な資金を動かし、個人はその大きな資金のうねりにはとても対抗できません。荒波の海に浮かんだ小さなボートみたいなものです。
大きな波に乗れたときには、波の勢いに押されて大儲けすることもできるでしょう。しかし波の向きが逆になり、そこに立ち向かう形になってしまったら、抵抗することもできず暴落の渦に巻き込まれます。多少仲間を増やしたりして抵抗しようとしても、抗えるのは一瞬で、やっぱり波に飲み込まれるのに変わりはありません。
実際、ある日突然にマーケット全体の大きな下げがやってくることがあります。2024年8月の暴落や、最近のトランプ関税ショックなどはその現実を私たちに教えてくれました。たとえ自分にはまったく非がなくても、そのような市場全体の大きな下げは、想像以上に頻繁に起こっているのです。