*12:10JST スパークス G Research Memo(10):高ROEと還元強化で投資家期待の底上げを目指す
■スパークス・グループ<8739>の中長期成長戦略
(2) 資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応
東証からの要請に基づき、同社も資本コストと株価を意識した経営を推進し、さらなる企業価値の向上に継続して取り組むことを表明している。PBRをROE、株主資本コスト、期待成長率の3つの要素に分解したうえで、既存戦略の拡大によるROEのさらなる向上、株主資本コストの引き下げ、新しい投資戦略の投入による期待成長率の向上に取り組んでいく。
同社のROE、PBR、PERを過去5期間について、ROEは株主が要求する収益率(同社は株主資本コストを9~12%と認識)を上回る水準で、PBRは安定して1倍を上回る水準で推移しており、2025年3月期のROEは16.2%、PBRは1.87倍となった。ROEとPBRは既に十分な水準にあり、前記の基本戦略を推し進めることでさらなる向上を目指す。一方、PERに関しては、11.31倍(2025年3月期)と東証プライム市場の平均(16.2倍)を下回っている状況である。同社はPER向上のために、新規領域への挑戦を強化することで将来的な利益成長に対する投資家の期待を高めるほか、情報開示のさらなる充実や投資家との面談の促進などによって成長戦略や同社の魅力を投資家に訴求していく考えだ。こうしたIR活動のさらなる充実によって、PERが向上することに加えて投資家の同社に対するリスク認識が減少すれば、株主資本コストの低下も期待できる。株主資本コストの引き下げに関しては、そのほかにも、同社の独立系の強みを生かした高いガバナンス体制や安定性と高収益を両立し得るビジネスモデルなどを丁寧に投資家に説明することで、投資家が同社に抱いている不確実性を取り除いていく方針だ。
企業価値のさらなる向上に向けて、キャピタル・アロケーションの計画(2026年3月期~2028年3月期)も公表している。新規事業への投資及び既存戦略へのシード投資に関しては、営業キャッシュ・フローの金額を目安に成長投資を実践していく計画であり、約110億円(投資の回収も含む純額)を想定する(過去実績をもとに算出)。営業キャッシュ・フロー内での投資によって財務の健全性を維持しながら投資家の利益成長に対する期待度を高めていく。株主還元に関しては、引き続き安定性・継続性に配慮しつつ実施する方針だ。配当金総額に自己株式の取得を含めて、総額約100億円を株主還元に割り当てていく(直近の株主還元実績をもとに算出)。積極的な成長投資と株主還元の充実を同時追求することで、ROE、PBR、PERをさらに高めていく。
■株主還元策
増配に加えて自社株買いも発表、資本コストを意識した積極的な還元策を実施
同社は持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るとともに、適切なキャピタルアロケーションを行い、株主に利益等を還元していくことを重要な経営課題の1つとして位置付けている。株主還元については、中長期的な視点に立ち、安定性・継続性に配意しつつ、業績動向、財務状況及び還元性向等のほか、実施時期や実施方法等を総合的に勘案して行うことを基本方針としている。具体的には、事業の持続的かつ安定的基盤となる収益力を示す基礎収益の成長について配当で還元し、業績変動があり不確実性が高く時期も一律ではない成功報酬等については自社株買いなど資本効率向上に活用して還元を実施する方針である。
この方針に基づき、2025年3月期の1株当たり配当金は前期比2.0円増の68.0円(配当性向51.5%)と過去最高額の配当を実施する。また、自己株式の取得も積極的に行っている。2025年3月期は2024年11月に210,000株、292百万円の自己株式の取得を完了し、2025年1月に取得した全株式の消却を実施した。加えて、2025年5月7日には200,000株、300百万円を上限とした自己株式の取得及びその全株式を消却する旨を発表している。取得期間は2025年5月8日から6月30日、消却予定日は7月31日としており、株主への利益還元とともに資本効率の向上を意識した積極的な姿勢が窺える。
2026年3月期の配当予想に関しては、業績予想を開示していないため未定としているものの、過去の配当性向は高い水準を維持してきたことに加えて、堅調な業績推移が見込まれることから、安定した水準が継続すると弊社では考える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林拓馬)
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