株式市場にとっては長期的な支援材料に
政権の熱意はよく伝わる計画ではあるが、その実行にはいくつか問題点も散見される。まず、国内では、大胆な規制緩和によるAI開発の自由放任、環境対策を軽視したデータセンター、発電設備の急拡大、これまで民主党政権が進めてきたDEI(多様性、公平性、包摂)政策の否定、AIによる労働代替加速によって生じる失業者の増加など、多岐に渡り、問題点が指摘されている。
対中政策では、強硬策が内製化をさらに加速させる。対中包囲網を築こうとすれば、中国側もBRICS、一帯一路関係国との間で中国AI経済圏の形成を急がせるなどといった点も懸念される。AI半導体大手エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは7月に中国を訪問した際、「もし、我々が中国市場に存在しなくても、華為技術(ファーウェイ)は必ず独自で解決方法を探し出すだろう」、「華為技術がエヌビディアを代替するのは時間の問題だ」などと発言、中国への半導体規制は米国にとって逆効果であるとの考えを繰り返し主張している。
決して完璧な出来とは言えないAI行動計画だが、株式市場に対しては長期的な支援材料になるだろう。米国大手ハイテク企業から、データセンター建設、その運用に必要となる電力供給能力拡大に携わる企業、AI導入により合理化が進むすべての企業にとって、業績拡大、利益成長のチャンスとなる。投資家が情報革命を超えるAI革命のインパクトを信じて疑わない限り、米国株式市場は過熱感を抱えながらも、上昇トレンドが維持されるのではないかと予想している。
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文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。