*13:07JST ヤマノHD Research Memo(7):積極的な人財投資により「従業員が投資したくなる会社」を目指す(2)
■中長期の成長戦略と業績見通し
(2) 人的資本をより活かす経営
少子高齢化が進むなか、採用難や人財の流動化は今後さらに進むと予想される。同社グループは、M&Aを通じて出身企業の異なる多様な人財をグループ内に数多く抱え、女性社員比率も約7割と高いことが特徴であるが、その強みを十分に活かしきれていない状況が、2024年3月期に実施したES調査の結果などで明らかになった。そのため、注力する取り組みを「多様な人財の活躍と有機的な結びつきで生産性の向上につなげる」とした。インナーブランディングによる企業理念(ミッション・ビジョン・バリュー)の浸透、グループを横断した自人事機能の強化、個人のキャリア形成を促進する職場環境の整備などをグループ全体で進める。また、現場を運営する各部門においては、柔軟な働き方、ワークライフバランスの促進、管理職層による組織マネジメント能力の向上、職種別/階層別の育成教育システムの見直し、人事評価制度(項目及び基準)の見直しなどを進める。そのなかで、ヤマノホールディングス<7571>においてグループ全体の従業員の統一採用・教育・育成を行うことも想定しており、各部門、グループ会社間に横串を刺していく人事機能が十分にワークする組織・体制づくりにも期待したい。
まず、1年目では人事機能の改善・強化、DE&I※1方針の策定、サクセッションプラン※2の策定・実行、人事制度の改定に取り組むこととしている。慢性的な人財不足、採用力の向上という課題に対しては、子会社・同社各事業部の人事担当者の育成によって人事担当者のスキルを向上させ、人事スペシャリストを増やし人事機能を強化する。DE&I方針の策定によって、多様な人財が創造性、革新性を発揮できる公平な職場環境の改善・整備を進める。役職員の高齢化、知識・スキルの伝承の遅れという課題に対しては、サクセッションプランの策定・実行により幹部候補人財や各部署の後継者人財の早期育成を図る計画である。人事制度については、各等級に求める役割・評価基準が不明確であるという課題があり、これを明確にした等級制度・評価制度の改定を行う予定だ。2025年3月期は、採用力の強化を目的とした教育研修を充実したほか、サクセションプランの策定・実行を促進し次世代リーダーの育成に着手するなど、人事機能のケイパビリティを強化した。2026年3月期は、多様な人財の採用強化と定着支援を行い、事業戦略に即した人財ポートフォリオを最適化する、マネジメント研修の体系化と評価基準の透明化、キャリアパスの明確化を進め次世代リーダーの育成を推進する、柔軟な働き方や支援制度を整備し、エンゲージメント向上施策を推進し、働きやすい職場環境を目指すことを取り組み事項としている。
※1 Diversity(ダイバーシティ、多様性)、Equity(エクイティ、公平性)、Inclusion(インクルージョン、包括性)を包括した人事戦略。多様性を受け入れ、すべての人が公平に扱われ、活躍できる職場の実現を目指す。
※2 将来のリーダーや重要なポジションを担う人財を計画的に育成し、円滑に後継者を選定するための計画。
そのほか、人的資本投資をエンゲージメント向上と組織の活性化、業績向上につなげるGoodサイクルを実現するため、2024年10月より従業員持株会への加入インセンティブを高め、経営参画意識の向上、従業員の資産形成支援を強化する制度改正を行った。従来は、持株会において拠出している会員に対して月次拠出時に当月拠出額の5%を定率で支給していたが、2025年以降は毎年3月から翌年2月までの1年間継続して拠出した会員については、翌年2月の定率奨励金を年間平均拠出金の100%相当額とした。これによって、会員は通常月の5%と合わせ、年間拠出額の約13%の奨励金を受け取ることができる。また、入会時期により継続拠出期間が1年未満の会員についても、入会月から翌年2月までの平均拠出金の100%相当額の奨励金を支給することとした。なお、特別入会キャンペーンとして2024年度については、2024年11月時点の会員のうち、2024年11月から2025年2月まで継続拠出した会員については、新会員も既存会員も対象期間(2024年11月〜2025年2月)の平均拠出金の100%相当額の奨励金を2025年2月に支給することとした。その結果、2024年10月時点の従業員の加入率は30.5%と2023年3月の2.7倍、2024年3月の2.2倍に急上昇した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)
<HN>