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キャリア

情報通信技術の発展で大きく変わる“教員に求められる役割” 知識を教える「ティーチング」から子どもの伴走者としての「コーチング」への大転換

ティーチングからコーチングへ

「先を生きる」と書いて「先生」ですが、これまでの教員は先を生きる立場として、子どもたちを導く役割の比重が大きかったと言えます。しかし「何がよいのか」が誰にもわからないVUCA時代(*Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの単語の頭文字をとった、「変化の激しい予測困難な時代」を指す) では、そうした導き手としての性格が少しずつ薄れていくでしょう。

 未成年を対象とする学校教育では、生徒指導などの場面では監督責任として導くことは当然必要です。しかし、知識創造という観点で言えば、子どもたち一人ひとりの興味関心をもとにした学習を支援するという役割のほうが、より重要になるでしょう。

 内閣府の総合科学技術・イノベーション会議が2022年6月2日に公表した「Society 5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ」のなかでは、定められた内容を計画的に教えるティーチングから、子どもが主体的に学ぶ伴走者としての役割を果たすコーチングへの転換が記載されています。

 コーチングとは“coach” の語源である「馬車」から派生した概念です。馬車の役割は、「大切な人をその人が望むところまで送り届けること」です。そこから派生してコーチングは「人の目標達成を支援する」という意味で使われるようになりました。対話によって問いを投げかけ傾聴し、考えを深めたり整理したりすることを主とする手法です。

 今後も、子どもがよりよく生きていくための成長に貢献するという教員の本質的な役割は変わりません。

 しかし、子どもの学びを促進するための質問設定や、「こうすれば、もっとよくなる」と背中を押してあげるための評価(フィードバック)をしながら一緒に学びをつくり、一緒に成長していく、そんな伴走者、あるいはコーチやファシリテーターのような役割の比重が上がりつつあるのです。

※宮田純也書『教育ビジネス 子育て世代から専門家まで楽しめる教育の教養』(クロスメディア・パブリッシング)から一部抜粋して再構成

【プロフィール】
宮田純也(みやた・なおや)/一般社団法人未来の先生フォーラム代表理事・学校法人宇都宮海星学園理事・横浜市立大学特任准教授。早稲田大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)。大手広告会社などを経て独立後、日本最大級の教育イベント「未来の先生フォーラム」と「株式会社未来の学校教育」の創設、約2億7000万円の奨学金の創設、通信制高校の設立に関わるなど、プロデューサーとして教育に関するさまざまな企画や新規事業を実施。2023年には「未来の先生フォーラム」と「株式会社未来の学校教育」を朝日新聞グループに参画させ、子会社社長を務めた。現在はこれまでの実績をもとにしてなど、さまざまな立場や役割で教育改革を推進している。編著に『SCHOOL SHIFT』『SCHOOL SHIFT2』(明治図書出版)、監修書に『16歳からのライフ・シフト』(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット 著:東洋経済新報社)。

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